新刊紹介

2021年6月23日

関千枝子さんの追悼集が出版される-牧内節男さんの「銀座一丁目新聞」転載

 柳 路夫

写真は3月掲載の追悼録から

 今年2月に亡くなった関千枝子さんの遺稿集『「ヒロシマ」を原点に生き抜いた人生』が8月6日に出版される(2月21日死去・享年88歳)。彼女が毎日新聞にいた期間は昭和29年4月から昭和42年退職するまでの僅か13年。千葉支局、社会部、学芸部、ラジオ・テレビ部に在籍する。この間、組合の婦人部長を務める。遺稿集には毎日新聞関係者が7人追悼文を書いている。目次を見ると『安倍靖国参拝違憲と即位・大嘗祭違憲訴訟』で活躍した人々が14人、「ヒロシマ」「ヒロシマフィールドワーク」で絆を深めた方々28人がそれぞれ追悼文を寄せている。それに彼女が書いた「中国の『反日デモ』報道に1930年代を思う」など7篇の遺稿も収められている。おそらく大書になるであろう。

 なんといっても原点は彼女が出版した「広島第二県女西組―原爆で死んだ級友たち」(筑摩書房)である。この本がもとで志を同じくする人々が、更に刺激を受けた若い人々が、それぞれ集り、彼女と社会・地域のつながりがさらに広がった。この本は『ノーモアー・ヒロシマ』を後世に伝える一書ともなるであろう。その意味では画期的な遺稿集である。

 関さんとの思い出を少し付け加える。何事にも積極的な彼女だが、千葉支局時代、酔虎伝の微笑ましい話もある。当時、酒飲みは好意的に見られるよき時代であった。コーヒー党の私はいつも隅で小さくなっていた。スポニチの社長時代、娘さんが民放の試験を受けるので民放の社長に「一言声をかけてくれませんか」と頼まれた。一応電話しておいたが『入社』はだめであった。後で本人を連れてその社長のところへ挨拶に行けばよかったと後悔した。頼りがいのない先輩であった。

 何事につけ人の面倒を見る福島清さんがこの本の編集委員会の一人であるのは毎日新聞の先輩として嬉しい。福島さんは、関さんが『安倍靖国参拝訴訟』の原告団団長であったことを書いている。2014年4月、宗教者・平和遺族会274人の代表として当時安倍首相が靖国神社に参拝したことを憲法違反として、今後の参拝差し止めを求めたのである。ときに82歳。司法記者クラブでの記者会見までやっている。その徹底ぶりは見事と言う他ない。振り返ってみれば関さんを大きく成長させたのは夫と離別後3人の子供を抱え再就職した全国婦人新聞時代かもしれない。大きく社会を見る目ができたとも言える。「戦後民主主義の原点に立ち返り、みんなが安心して平和に暮らせる社会をつくる」という言葉は我々に重くのしがかってくる。

※牧内節男さんが主宰する「銀座一丁目新聞」は
http://ginnews.whoselab.com/