新刊紹介

2021年10月12日

元社会部司法記者、飯島一孝さんが新刊「弁護士になるには」――検察官、裁判官、弁護士の3部作完結

 「あなたにとって魅力的な職業とは?」「どうしたらその職業につけるのですか?」

 こうした問いに答えてくれるぺりかん社の「なるにはBOOKS」を手がけて3冊目の本「弁護士になるには」が、このほど出版されました。「検察官になるには」「裁判官になるには」に続く3冊目の司法関係の本で、法曹3部作が揃ったことになります。毎日新聞の司法記者時代に得た経験を踏まえてまとめたつもりですが、どこまで真相に迫れたかは、読者の判断に委ねたいと思います。

 私自身、学生時代には弁護士という職業に憧れた時期もあったので、前の2冊以上に気持ちを込めて書いたつもりです。実際に入学したのは外国語を教える大学で、私の憧れはそこで途絶えた形です。だが、学生の中には司法試験を目指して勉強していた人もいました。クラブの先輩はいったん就職した会社を辞めて司法試験に挑みましたが、合格まで10年近くかかりました。

 さて、前文が長すぎましたが、今回改めて、弁護士を開業している方たち約10人にインタビューしてみて、私が記者として関わった頃と比べて、様変わりしているなと感じました。

 その第一は、司法試験合格までの期間が間違いなく短縮され、合格しやすくなったことです。その最大の理由は試験制度改革で法科大学院(ロースクール)ができたことです。大学法学部を卒業してロースクールで所定の単位を取得・終了すれば、約3人に1人が司法試験に合格できるようになりました。あえて言えば、3年間試験を受け続ければ、ほぼ間違いなく合格できるということです。

 一方で、「誰でも取れる簡単な資格になってほしくない。私は2回不合格になったが、いい意味で挫折感を味わった貴重な経験だった」と語るベテラン弁護士もいました。

 第二は、試験制度改革で弁護士の数が増加し、2018年には4万人を超えています。今後も増え続き、20年後には6万人を超すと推測されています。訴訟社会と言われる欧米諸国に迫っていることは間違いありません。

 第三は、弁護士の職場が法廷から企業や中央官庁に急速に広がっていることです。特に目立つのは、企業に所属して職務を行う「企業内弁護士」で、この10年間で約6倍に増えています。外部から口を出す顧問弁護士と違って、企業の中から法律問題をチェックできるメリットがあるからです。

 その一方、弁護士が数百人所属する大規模法律事務所が増えていて、このうち上位5社は「5大ローファーム」と呼ばれています。こうした事務所では優秀な人材を集めていて、毎年採用される裁判官と検察官の総数とほぼ同数の優秀な人材を確保していると言われています。もちろん、採用された弁護士には高給が支払われていることは明らかです。

 こうした現実を目の当たりにして、日本の司法界も今後さらに変わっていくだろうと思います。ただ、高収入を稼ぐ勝者と、事務所経費に追われる敗者との格差がますます広がっていく気がします。カネや権力に動かされず、正義を貫く弁護士が増えることを心から願っています。

(飯島 一孝)

※「弁護士になるには」 ぺりかん社、定価 1500円+税