新刊紹介

2022年4月27日

「NFLドラフト候補名鑑2022」を松崎仁紀さんが推薦

 アメリカのプロフットボール、ナショナル・フットボールリーグ(NFL)は年2回、お祭りを迎える。一つは言うまでもなく、王者を決めるスーパーボウルで、毎年2月に開催される。もう一つが大学選手を対象とした新人ドラフトで、4月下旬に開かれ、テレビ中継されるほどの関心と人気を集める。今年は4月28日(日本時間29日)から3日間、ネバダ州ラスベガスが会場。「NFLドラフト候補名鑑2022」は指名が予想される209人の選手をポジションごとに上位から紹介するとともに、32チーム別のドラフト予想、そしてドラフトの基礎知識を解説し、「NFLドラフトを120%楽しむためのガイドブック」になっている。

 NFLドラフトは前シーズンの成績・勝率の下位チームから優先的に指名するウェーバー方式。大学4年生と資格を得た3年生を対象に、32チームが1巡から7巡まで順番に行う。1位指名権を持つのは3勝14敗だったジャクソンビル・ジャガーズ、順にデトロイト・ライオンズ(3勝13敗1引き分け)、ヒューストン・テキサンズ(4勝13敗)と進み、最後はスーパーボウル優勝のロサンゼルス・ラムズになるはずだが、今年はライオンズが1巡2回目の指名権を持つ。というのは、ラムズは昨年、クォーターバックのマシュー・スタッフォードを獲得する見返りに、22年と23年の1巡指名権をライオンズに譲っているからだ。これがNFLドラフトのもう一つの特徴で、選手と同じようにドラフト権もトレードできるのだ。1巡ドラフト権を2年失っても、スーパーボウル優勝の悲願を達成したラムズにとって、賭けは大成功だった。

 チームの実力が接近しているNFLは、新人選手の力が成績に大きく影響する。どうしても獲得したい選手がいるが、指名順が下位のため、このままでは他チームに奪われるのが確実といった場合、そのライバルチームより上位のドラフト権を持つチームと指名権を交換することで、順位を繰り上げることが可能になる。1巡目、チームに与えられる制限時間は10分。この間にトレード交渉をしたり、指名選手の絞り込みを行ったりと、首脳陣が決定を下す〝ウォールーム〟と呼ばれる部屋は文字通り戦場だ。福引抽選会のような日本のプロ野球ドラフトとは違い、NFLドラフトはポーカーのように作戦と駆け引きの、もう一つのゲームなのだ。

 本書にはNFLを知るための素材が満載されている。

(松﨑 仁紀)

※「名鑑」は元写真部の小座野容斉さんが樋口幸也さんと共同編集。ベースボール・マガジン社刊、1450円