随筆集

2023年7月31日

「古関裕而氏の野球殿堂入りは、野球文化學會のお蔭」と池井優さん

池井優さん

 野球を「歓喜の学問」にする。

 野球好きの毎日新聞OB諸岡達一(87歳)鳥井守幸(91歳)原田三朗(2017年没82歳)らが1999年秋に立ち上げた「野球文化學會」。会員は100人ほどだが、野球好きぞろいである。その論叢集『ベースボーロジー』は、ことし発行分で第16号を数える。

 2023年度総会が7月30日、東京ドームホテルで開かれ、現会長、鈴村裕輔・名城大学外国語学部准教授(47歳)らの進行で議事を終えたあと、懇親会の乾杯に登場したのが会員の池井優・慶應義塾名誉教授(88歳)だった。

 「古関裕而さんがことし野球殿堂入りしたのは、野球文化學會『ベースボーロジー』のお蔭なのです」と地元紙の号外を掲げて、その事情を話した。

 池井さんが古関裕而さんのことを書いた『ベースボーロジー』は2018年6月発行の第12号。特集「野球と音楽」—応援歌の果たす役割―の巻頭に
  古関裕而と応援歌
  ——「紺碧の空」「六甲おろし」「栄冠は君に輝く」を中心に
 という見出しで12㌻にわたった。

 「紺碧の空」は、1927(昭和2)年につくられた慶應義塾の応援歌「若き血」に対抗してつくられた。31(昭和6)年の春のリーグ戦から歌われ、早稲田が早慶戦に勝利した。

 《「紺碧の空」は早稲田にとって7番目の応援歌であったが、勝利と相まっていつまでも歌い継がれ、今では第一応援歌となっている》

 古関さんは、慶應の「我ぞ覇者」(その4番は「よくぞ来たれり好敵早稲田」)、早稲田の「光る青雲」(「慶應を倒し意気あげて、この喜びを歌おうよ」)と、早慶両校の応援歌をつくり《その極め付きは「早慶讃歌—花の早慶戦」(藤浦洸作詞)である。神宮球場の早慶戦の試合開始前に両校学生が一緒に歌う。ライバル校が共通で歌う応援歌は他に例がない》。

 阪神タイガースの歌「六甲おろし」、夏の甲子園で歌われる「栄冠は君に輝く」についても詳しく解説した。

 池井教授の呼びかけで、古関さんの地元福島市は「古関裕而氏の野球殿堂入りを実現する会」をつくり、活動を展開した。2020年、古関さんがモデルのNHK連続テレビ小説「エール」が放送され、後押しとなった。野球殿堂入り候補者にノミネートされて5度目の挑戦で、殿堂入りを果たした。

 池井さんは、こう説明したあと、声高らかにカンパ~イ!

 会場では、元大洋ホエールズ投手ヒゲの齊藤明雄さん(68歳、明夫)と報知新聞記者・ベースボールアナリストの蛭間豊章さんとの対談もあった。

 毎日新聞OBでは、『ベースボーロジー』に「『ベースボール傑作選』を読む」を連載している松崎仁紀さん(76歳)が出席した。

(堤  哲)