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2023年7月3日

日本記者クラブ理事長就任、前田浩智主筆がクラブの積極的活用を呼びかけ

 公益社団法人「日本記者クラブ」の理事長に5月末、就任しました。毎日からの理事長選出は伊藤芳明元専務取締役主筆以来で、6年ぶり。任期は2025年までの2年です。

 デジタルからの挑戦が激化しています。新聞は発行部数を大きく減らし、メディア企業の関心は時に、ジャーナリズムよりも経営に向かいがちです。

 しかし、ニュースに鋭く反応し、自らの専門性と時代を捉える目を基本に取材し、報じていく現場記者たちの営みはまったく変わりません。その生命線を確保していくことこそ、メディアの持続性につながると考えます。

 日本記者クラブは、「報道機関相互の交流を緊密化する」ことにより、民主主義の発展、国民生活の向上安定などに資することを目的に発足しました。

 報道の原動力はもちろん、各メディアの切磋琢磨です。ただ、個人が情報発信手段を手に入れ、米国のトランプ前大統領を引き合いに出すまでもなく、権力者がネットを活用して都合のいい情報ばかりを流し、批判的なメディアを記者会見から排除することも起きています。メディアのおおらかな競争は、権力にとって分断のチャンスとも映ります。

 当事者から粘り強く話を聞き、ニュースの全体像に迫る。夜回り取材も大切ですが、オープンな場で本音を引き出すことも重要な作業です。日本記者クラブは互いに知恵を出し合い、愚直に記者会見や研究会を続けています。そうした連携はジャーナリズムの底上げを図り、権力に対抗する足場になります。

 今般、毎友会事務局より、会員減の折、OB、OGの皆さんに日本記者クラブへの加入を呼びかけてみては、とのアドバイスを頂戴しました。一人でも多くの方にクラブに加入いただき、記者会見を鍛え直し、発信力を強化できないかと考える次第です。

 クラブ費は月額5000円です。新型コロナの3年間を経て、クラブも以下の通り、利便性が高まりました。得られるものも多いと思います。ご加入を検討いただければ幸いです。

 【記者会見】

 日本記者クラブの活動の中心は記者会見の企画、開催です。22年度は172回主催しました。これに加えて、参院選前に9党党首討論会を開きました。

 記者会見は会員であればだれでも参加できます。会場のほか、オンラインでも参加できますので、遠隔地にいても、自宅からでも質問することができます。この仕組みは新型コロナ感染症をきっかけに導入したものですが、今では完全にデフォルトとなりました。

 平均すると、記者会見の参加者は3分の1が会場で、3分の2がオンラインでの参加になります。会場では多くのOB・OG会員が経験をもとに熱心に質問しています。

 参加者が多かった22年度の主な記者会見は、参院選9党党首討論会338人▽栗山英樹WBC日本代表監督258人▽尾身茂さんら専門家有志193人▽村上宗隆三冠王185人▽セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使159人▽映画「ドライブ・マイ・カー」濱口竜介監督ら158人――などです。

 記者会見は、各社のベテラン記者で構成される企画委員会が企画・立案し、多くの場合は司会も務めています。

 【映画試写会】

 ジャーナリズムの観点から関心を集める映画の試写会も積極的に行っています。23年のラインナップは以下の通りです。

・1月 「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」(試写会後に原告遺族、代理人弁護士の会見あり)

・2月 「ただいま、つなかん」、「マリウポリ 7日間の記録」、「ワース 命の値段」

・3月 「サイレント・フォールアウト~乳歯が語る大陸汚染~」

・4月 「ハマのドン」、「アダマン号に乗って」

・6月 「キャロル・オブ・ザ・ベル」、「わたしたちの国立西洋美術館」(試写後に田中正之館長の記者会見)

 試写会は通常、夕方5時過ぎから。無料で、1人の同伴が可能です。試写会後に9階の和食レストランで試写会特別メニュー(和洋とも2750円)を用意しています。

 【ラウンジ・レストラン】

 日本記者クラブは日本プレスセンタービルの9階と10階の施設を運営しています。記者会見は、10階のホール、9階の記者会見場を利用して開催します。

 9階には喫茶、軽食スペースラウンジがあり、取材、打ち合わせなどに利用できます。仕事をする人用のワーキングスペースもあり、出張時などに利用する方が多いようです。

 10階には老舗高級レストランのアラスカが入り、日比谷公園の見事な眺めとともにアラスカのメニューが楽しめるほか、日本記者クラブ会員向けの特別メニューも用意されています。9階にもそのアラスカが料理を提供するクラブ会員用のレストランがあり、特別メニューを提供しています。

 10階ホール、9階記者会見室、大会議室、小会議室は、会員が独自に主催する記者会見、定期的な会議、勉強会などに幅広く利用されています。喫茶、飲食サービスを利用した大小の宴会、同期会や同窓会などにもご利用いただけます。近隣の会議室に比べればかなり安く借りられるほか、飲食と組み合わせた特別料金もあります。

 【記者クラブ会報】

 記者クラブの活動については毎月、記者クラブ会報を発行し、会員の皆さまに送っています。メインは記者会見のリポート、それにニュースの現場からの現役記者たちの奮闘の報告、ベテラン記者が自負、反省を込めて記す「書いた話 書かなかった話」、記者から記者へ話題のバトンがわたる「リレーエッセー」、各社のとっておきの写真にベテランが文章を寄せる「写真回廊」などをお届けします。会員が出版する本の紹介コーナーもあります。

 OB、OGの皆さまとの連携強化を祈念申し上げます。

(主筆、前田 浩智)