随筆集

2016年2月12日

二つの環境シリーズを書き終えて

環境シリーズ最終第11巻表紙
環境シリーズ最終第11巻表紙

 『世界の環境問題』シリーズ全11巻を昨年11月、11年がかりで完結した。その前に出した『ドキュメント 日本の公害』は全13巻。このほかのテーマを合わせると、32年間に書いた環境の本は35冊で、全部積み重ねて見たら110センチを超えた。世界の環境問題は外国に取材に行かなければならないので、費用がかさむ。執筆は難行苦行の連続だった。こんな仕事に取り組もうと心に決めたのは、毎日新聞社会部の環境庁担当記者時代に地球環境問題が人類の未来を閉ざしかねない重要な問題だという危機意識に目覚めたためであった。

 仕事は難行苦行だったが、喜びもあった。例えば大学で環境問題の環境関係の卒論指導に携わった時、多くの学生が私の著書を参考図書として使ってくれていることを知り、充足感を味わった。また『ドキュメント 日本の公害』は公害・環境問題の最初かつ唯一の通史としての評価が定着したように思われる。残念に思うのは、日本では地球温暖化が環境と人々の日常生活にもたらす影響についての認識が欧州主要国はもちろん、世界平均と比べても著しく低いことである。このため政府の意識も低く、2030年の温室効果ガス削減目標はドイツや英国の半分以下である。

 著名な専門家の多くが地球温暖化の進行で現代文明が崩壊の危機に瀕していると警告している。わが国の温暖化対策の貧困は改められなければならないとの思いを強くしている。

(川名 英之)