随筆集

2021年4月23日

白川義員写真展「天地創造」が東京都写真美術館で5月9日まで

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 これは、米ユタ州とアリゾナ州にあるバーミリオン・クリフ国立公園の北西端にある岩山の風景である。今、恵比寿の東京都写真美術館で開かれている白川義員写真展「天地創造」(5月9日まで)の入口に飾られた巨大な写真をシャメした。

 「ザ・ウェーブ」。①~⑤、5点が展観されている。

 《巨大な岩がまるで波が押し寄せるような形で固定されている。このような豪快な岩を手でさわりながら実際に見た事はかつてなかった。このウェーブ周辺は見渡す限り赤と白の岩でおおわれている》

 《ウェーブに行くことが出来るのは1日20人。20人に手渡されるのが行き帰り6枚の風景写真が印刷された1枚のパンフである。最初の6枚はウェーブに向かって歩く方向の風景写真で、後の6枚はウェーブから帰る方向の写真。この風景に向かって歩きなさいと指示している》

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 《実際に現場に行くにはユタ州側の北方5kmあたりから徒歩で南下し、州境を越えてアリゾナ州側を約1km南に歩くと、このウェーブに至る》

 英文のタイトルは「The Earth」。地球が持つ美や神秘、荘厳さ。前人未踏の領域に挑戦し続けた写真家白川議員さん(86歳)の集大成の写真展である。前期展「永遠の日本」(Eternal Japan)を見て、「絶景」の数々に感動、後期展「天地創造」に足を運んだのだ。

 毎友会HPに紹介するのには、それなりの訳がある。入ってすぐに山岳写真家、白川議員さんの真骨頂、エベレストやアルプスなど世界中の山の偉容が並ぶが、その中に世界8位の高峰、標高8,163m「マナスル東壁」。日の出の太陽を受けてオレンジ色に輝いている。

 その先の説明にこうある。《この山は日本人が初登頂をしたのである》

 初登頂は1956年5月9日午後0時30分。第3次マナスル登山隊(槇有恒隊長)の今西壽雄さん(京都大学山岳部OB)とギャルツェン・ ノルブ氏(ネパール人隊員)の2人。

 巨峰マナスル登頂ついに成功
 世界登山史に輝く金字塔
 5年間の苦労実を結ぶ

 これは毎日新聞1956(昭和31)年5月18日朝刊1面トップの見出しだ。マナスル登山隊の第1、第2次登山隊員だった運動部長・竹節作太が書いた。

 《敗戦後10年。第1報が日本に届いたのは5月18日。「祝マナスル登頂」のアドバルーンが16個も上がった》

 《登山隊が帰国した6月22日、歓迎の人波は羽田空港どころか蒲田の駅まで人で埋まったそうである》

 マナスル登山隊は、1954年の第1次から毎日新聞が全面的に応援して行われ、56 年の第3次登山隊の最年少メンバー日下田実(早大山岳部キャプテン、のち毎日新聞記者)も5 月 11 日に加藤喜一郎氏(慶応大学山岳部OB)と共に頂上に立った。

 記録映画「マナスルに立つ」は、登山隊に同行した毎日新聞写真部員、依田孝喜が撮影したもので、依田は1957年、第5回菊池寛賞を受賞した。

(堤  哲)