随筆集

2022年2月28日

『野球博覧』モロさんのシールズ軍来日全記録

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 「シールズ軍来る!」

 思わぬところで、このポスターに出くわした。カレッタ汐留B2にある電通の「アドミュージアム東京」の常設展「ニッポン広告史」に展示されていた。

 サンフランシスコ・シールズで知る本物野球
 無届けスコアシートから全6試合を詳細に検証

 『野球博覧』Baseball Tencyclopedia(大東京竹橋野球団編2014年刊)354ページから390ページまで37ページに亘って、シールズ来日全試合の記録が詳述されている。

 本の大きさはA5判だが、横組みで小さい活字がぎっしり詰まっている。1ページ48行×46字、2,208字、400字原稿用紙で5・5枚、200枚に及ぶ大原稿である。

 筆者は、1959年入社、整理本部の鬼才・野球オタクの諸岡達一さん(85歳)である。「野球文化學會」(https://baseballogy.jp/ )生みの親でもある。

 《10月15日(土曜日)朝6時半、僕は本郷区丸山新町の家を出た。後楽園の開門は午前8時。焦土の東京は雨。走るように歩いて35分。巣鴨にある私立・本郷中学1年生である》

 サンフランシスコ・シールズ対巨人、初戦のプレーボールは午後2時5分だった。中学1年生の諸岡少年は、試合開始7時間半も前に家を出て、後楽園球場に向かった。

 諸岡少年の興奮ぶりが分かる。初戦は学校が休みだったが、他の試合は、学校をサボって観戦、それが出来ない時はラジオにかじりついてスコアブックをつけた。

 全6戦のスコアは以下の通りだが、ポスターの日程とは違っている。16日の対極東空軍は戦災孤児デーをうたい、新聞は「秋晴れの下、孤児達に最良の和やかな日曜」と報じた。

 ① シールズ13-4巨人(10月15日後楽園球場)
 ② シールズ 4-0東軍(10月17日神宮球場)
 ③ シールズ 3-1西軍(10月21日西宮球場)
 ④ シールズ 2-1全日本(10月23日甲子園球場)
 ⑤ シールズ13-4全日本(10月27日中日スタジアム)
 ⑥ シールズ 1-0全日本(10月29日神宮球場)

 10月30日の日曜日は「オドールデー」と15歳以下の子ども4万人を後楽園球場に招待して、東京六大学野球の選抜チームと対戦した。

 この試合、都内の小学校5年生以上と中学生が1校20~25人割り当てられたそうだが、当時小学校2年生だった私(堤)は、資格外で観戦することが出来ず、残念に思った記憶がある。諸さんや大島幸夫さん(84歳)は後楽園球場で観戦しているのだ。

 日米野球の違い。カルチャーショックを諸さんが書いている。

 《それは「昭和24年」……。目の前で、野球の認識の違いが展開する。驚異と畏敬と屈辱と憧憬。野球が違う。これこそが真の野球か。いまのいままで後楽園球場で見ていた日本野球連盟の職業野球は、あれは「野球にほど遠いのではないか」。日本野球選手たちの惨めな姿が衝撃的に過去となる。以下は、野球とは何かを斬新に認識した少年Mの昭和24年晩冬の覚書》

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大東京竹橋野球団発行『野球博覧』の表紙

 『野球博覧』Baseball Tencyclopedia は、2014年に大東京竹橋野球団S・ライターズが創設30周年記念で発行した。団員が高齢化、もはや野球の試合が出来なくなって、解散記念でもあった。

 Tencyclopediaは「天才」と「百科事典」の造語。米野球史家ジョン・ソーン氏『Baseball in the Garden』から「誰が野球を創ったか」を松崎仁紀さん(75歳)、川上・大下・長嶋ら「人物野球伝」、毎日新聞の野球に対する取組み、社内野球史など本文415ページ。

 非売品としましたが、多少残部があります。送料とも@1,180円でお分けします。申し込みは へ。

(堤  哲)