2022年3月31日
堤哲さんが記事にした「白い本」 発刊から半世紀、ロングセラー本になっている!
作家檀一雄著『火宅の人』。そのモデルである民芸俳優、入江杏子さんの『檀一雄の光と影』(文藝春秋)を読んでいたら、「中央公論」「婦人公論」元編集長八木岡英治さんの名前が出てきた。
入江さんは《「いい文章というものは、うまく炊けた御飯のように飯粒が立って、自然に眼の中に飛び込んでくるものです」
私は今回この一文を書きながら、八木岡さんの言葉を思い出し、〈ああ、これでは駄目だなあ〉と何度も筆がとまりました》と綴っている。
八木岡さんの名前に記憶があった。図書館で毎日新聞の記事・紙面検索「毎索」にあたると、51年前に書いた記事がヒットした。
「アレッ、この本何も書いていない」――。
真っ白の紙を束ねてハードカバーをつけた「白い本」。1冊380円だった。
社会部3年生、遊軍の末席にいたときの原稿である。
ネットで検索すると、「白い本」はロングセラー本になっていた。ISBNも付けてA5判美装箱入り1,000円+税、文庫判上製550円+税で販売されている。版元は二見書房である。
国会図書館の蔵書にもなっていて、「Y88-1046」で請求すると、閲覧可能だ。
ついでに朝日新聞の聞蔵を検索すると、毎日新聞の記事の4か月後、10月9日付で八木岡さんが「ひと」で紹介されていた。
〈何が書かれているかわからない。その恐ろしさがネライで〉
八木岡さんは、当時59歳とあるから、とっくに亡くなっていると思う。
この記事は、今回初めて読んだ。というのは、その年の8月異動で私(堤)は大阪本社社会部に転勤となり、街頭班と呼ばれるサツ回りをしていた。事件・事故に追い回され、大阪の朝日新聞紙面に載ったのかどうかも知らない。
『檀一雄の光と影』の書き出しに、著者入江杏子さんの父、入江邦太郎は大阪毎日新聞(大毎)の記者だった、とある。1958年没74歳。人事部に問い合わせると、人事記録がない、という返事だった。
(堤 哲)