随筆集

2022年5月18日

皇太子・美智子さまのツーショット写真撮影は鈴木茂雄さん

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 元毎日新聞社会部の宮内庁記者、現成城大学教授、森暢平さん著『天皇家の恋愛』(中公新書)第5章「美智子さまは恋愛結婚だったか」に皇太子さま(現上皇陛下)と美智子さま(現上皇后陛下)とのツーショット写真が載っている。

 その写真説明に「ただし2人の間に男性の足が見える」とある。

 この写真を撮ったのは、東京本社写真部の鈴木茂雄カメラマン、当時31歳である。

 その間の事情を鈴木カメラマンはこう証言している。

 ——昭和33年7月27日午前8時30分ころ、場所は軽井沢のテニスコート。皇太子さまは観客席の最前列のベンチに腰をおろし、そこへ素晴しいお嬢さんが姿を現し、学友の隣の席につかれた。早速カメラを構えると、学友が体全体をそらしてくれたので、殿下とお嬢さんが並ぶ図柄になった。縦位置で2枚写し、別のカメラでカラーを写す。

 皇太子の隣に座っていたご学友が、カメラに気づいて自分が映らないように配慮したのである。特ダネ写真となった。

 この写真が陽の目を見たのは、婚約発表があった11月27日だった。撮影の4か月後である。

 お妃報道の過熱から、宮内庁から公式発表があるまでは一切報道しないことを報道各社が申し合わせていた。報道協定である。

 毎日新聞社は、これまでの取材から極秘に8ページの号外を作り、全国の販売店に配送していた。婚約発表・報道協定解除と同時に一斉に配布した。

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 「朝日の2ページ号外、読売の半ページ号外に比して圧倒的な質と量の勝利であった」(『毎日新聞百年史』)

 このツーショット写真は、その1面に大々的に扱われた。

 鈴木さんは、1946(昭和21)年入社。大阪本社写真部デスクから75(昭和50)年9月東京本社写真部長。毎日グラフ編集長、昭和史事典編集長も務めた。2009年没83歳。

 本書(『天皇家の恋愛』)は、皇室の150年の近代史を「恋愛」というこれまでにない視点で切り取った、自分で言うのもなんだが、画期的な本である。

 これはこの毎友会HP新刊紹介に載った著者・森暢平さんの宣伝である。

(堤  哲)