2022年9月15日
ハワイの日本語新聞「日刊サン」のニュースコラムが50本に――元社会部司法記者の報告
ハワイで発行されている日本語新聞「日刊サン」に3年程前から寄稿を頼まれ、毎月1本(当初は月に2回)、メールで原稿を送り、「高尾義彦のニュースコラム」として掲載され、14日で50本になった=写真。97歳になった大先輩、牧内節男さんにはとても及ばないが、「書くこと」にこだわり、発信の場に恵まれたことに感謝している。
この企画は、定期的に赤坂で飲み会を開いてきたグループのメンバーの一人、TBSシニアコメンテーター、川戸惠子さんから持ち込まれた。当時は川戸さん自身がコラムを執筆していて、寄稿者を増やしたいとのことで、気軽に引き受けた。
2019年6月がスタート。「宇宙かあさん」として参院選に立候補を予定していたJAXA(宇宙研究開発機構)の水野素子さんが、赤坂の飲み会に飛び入りして一緒にカラオケなど楽しむ機会があった。そこで第1回目のテーマは「参議院議員にもっと女性を」に決めて、1回2000字ほどのコラム執筆を始めることになった。水野さんは今回の参院選で立憲民主党から立候補し神奈川で当選している。
2回目からのテーマを並べると、「蝉が鳴く頃」(2019年7月)、「大嘗祭と阿波忌部」(同)、「八月ジャーナリズム」(8月)、「緑の宝石 スダチの季節」(同)、「裁判員裁判10年経って」(9月)、「三陸鉄道に乗って」(同)、「銭湯は減る一方だけど」(10月)、「日本の童話 100年の歴史」(同)、「国家機密と新聞」(11月)、「帰ってきた寅さん 今年映画は」(同)、「連句の楽しみ 奥の細道330年」(12月)、「人間みなチョボチョボや」(同)。
出身地の徳島に関する話題や、40年近く前の開通時に取材し東日本大震災の被害からも立ち上がった三陸鉄道、生前付き合いのあった作家、小田実さんの話など、テーマは自分が専門としてきた司法にとどまらず、あちこちに手を広げた。小学校時代の同級生二人とメールで楽しむ連句(歌仙)は212巻に達した。
2020年に入ると、「特捜IR捜査の光と影」(2020年1月)、「東大安田講堂事件から半世紀」(同)、「日本の美術館が進化する」(2月)、「法匪!? 検事総長候補の定年延長」(同)、「ハワイにも咲く今年の桜事情」(3月)、「皇居のお濠、きれいな水に」(同)。
黒川弘務検事総長実現のために安倍政権が法律を無視しようとした事件では、事態が動く可能性があったので掲載時期を早めてもらった。すると直後に、国家公務員法の定年延長規定を検察官にも適用する、との方針が当時の安部晋三首相から示され政治問題化し、その後は「麻雀報道」などの展開となった。ハワイの桜は、知り合いのボタニカルアーティスト、石川美枝子さんたちがハワイで開催した植物画のグループ展を取り上げた。
ここまでは毎月2回の掲載だったが、新型ウイルスの感染拡大で経営に打撃を受けた「日刊サン」は、「紙」の新聞を週2回に減らし、デジタルに重点を移した(その後、「紙」は一時、発行休止に)。寄稿回数も月に1回となった。
この時期のテーマは「春の四国路 お遍路さんが行く」(4月)、「香川県豊島の自然と花を見る会」(5月)、「アウンサンスーチーさん」(6月)「辺野古と沖縄の民意」(7月)、「どこへ行った?女性天皇論」(8月)、「日本の陶芸 苦境を超えて」(9月)、「田中角栄元首相と菅義偉新首相」(10月)、「リニア中央新幹線、ちょっと待って」(11月)、「タネは誰のもの? 種苗法改正、さらに議論を」(12月)。
2021年に入って、「核兵器禁止条約発効、日本はどうする?」(1月)、「日本の裁判、IT化と課題は」(2月)、「東日本大震災から10年、いま考えること」(3月)、「本気で原発に代わる新たなエネルギー政策を」(4月)、「女性が輝く時代へ、一歩でも前へ」(5月)、大丈夫か?デジタル庁9月発足」(6月)、「沖縄戦犠牲者の遺骨と辺野古埋め立て」(7月)、「東京五輪パラリンピックから総選挙へ」(8月)、「どうなる将来のエネルギー選択」(9月)。
この年の10月から「紙」の新聞を毎週土曜日だけ復活させ、コラムはデジタルにオンした週の土曜紙面に掲載されるようになった。
「桜を見る会疑惑と検察審査会」(10月)、「将来のノーベル賞学者を育てるために」(11月)、「瀬戸内寂聴さん、辻元清美さん……」(12月)、「天皇制度の将来を考える年に」(2022年1月)、「ノーブレス・オブリージュを、天下分け目の関ケ原で考える」(同)、「日大事件後、どうなる私立大学のガバナンス」(2月)、「徳島・上勝町のゼロ・ウエスト運動を世界に」(3月)、「ドバイ万博から大阪・関西万博へ」(4月)、「沖縄復帰50年、本土が引き受けるべき責任は」(5月)、「IT化目指す日本の司法、現状の課題は?」(6月)、「日本の寄付文化はどう変わって行くのか」(7月)、「国交回復50周年、中国とどう付き合うのか」(8月)。
堅苦しいテーマも、できるだけ自分の体験などを盛り込んで、取っつきやすくと心がける。検察審査会の審査員だった経験、99歳で亡くなった同郷の瀬戸内寂聴さんとは、中坊公平さんの取材に関連して、俳人鈴木真砂女さんが経営していた銀座・卯波でお酒を飲んだ話、辻元清美さんとは彼女が早稲田大学の学生で「ピースボート」を立ち上げた頃から取材した歴史。日大事件では、学生時代に初代若乃花の娘さんの家庭教師をしたこと(二子山部屋の土俵を、その後、日大相撲部が使用)……。関が原では、美術や文化の支援に力を入れる関ケ原製作所元社長、矢橋昭三郎さんの要請で、旧知の彫刻家、杉本準一郎さんとのトークイベントにも招かれた。
今後、いつまで続けるか見通しは立たない。「日刊サン」の社長兼編集者の平山由美子さんから「今後ともよろしく」とメールをいただいている間は、あれこれネタを探して。付け加えると、これらのコラムは今春30巻でフィナーレとした季刊同人誌「人生八聲」に転載し、雑文と俳句を集めた自費出版の『無償の愛をつぶやく Ⅲ』(2020年6月刊)にも収録してきた。
50回目のテーマは「読書の秋 どんな本を読もうか」。
「日刊サン」https://nikkansan.net/ のページを開いて、「ニュースコラム」を検索していただければ、バックナンバーを読めます(WEB掲載スタイルは流し込み)。
(元東京社会部 高尾 義彦)