随筆集

2023年9月11日

橋場義之著『ジャーナリズムのココロとワザ』読後の雑観

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 橋場義之著『ジャーナリズムのココロとワザ』(創論社)を読んだ。毎友会HP新刊紹介で知って、近くの区立図書館にリクエスト、購入してくれた。

 東京新聞の紙面審査報のコラム約150本を一冊にまとめたとある。2002年4月に55歳で上智大学新聞学科教授、その2年目の03年から22年12月まで、40日に1度、1200字を20年分である。

 橋場さんは、毎日新聞で紙面審査委員をしていて、「同じ社内で働いている仲間の仕事が対象で、審査する上では礼儀は当然ながらやはり遠慮や配慮、忖度が多少なりともないわけでない」とその難しさを、あとがきで述べている。

 東京新聞といえば「こちら特報部」である。脚注に《1968年3月から毎日掲載している2㌻のワイド紙面。「ニュースの追跡・話題の発掘」をテーマに時の話題の深層や展望を取材する独自色の強い紙面。毎年4月1日「エイプリルフール」には架空のニュースも掲載》とある。

 もう55年も続いているのだ。

 2017年6月26日「闘う記者会見」では、「本紙社会部の女性記者が執拗果敢に食い下がった」。菅義偉官房長官(当時)の定例記者会見である。

 「質問にまともに答えようとしない相手にひるまず、引き下がらなかった対応は、記者として当然の姿勢といえよう」と評価。「むしろ、その場にいた他社の多くが、応援の声もあげずにひたすらパソコンに向かってやりとりを記録していたのは情けない限りだ」。

 橋場さんが毎日新聞に入社した翌1972年、西山事件が起きた。

 《「これは言論の自由、報道の自由の問題だ。わが社は断固として闘うから、心配・動揺しなくていい」。毎日新聞東京本社会議室で、編集幹部のこんな勇ましい言葉を、興奮を覚えながら聞いたのを鮮明に覚えている。…「外務省機密漏洩事件」。1週間も経たないうちに幹部の言葉に力がなくなってきた。起訴状にあの「情を通じ」という記載が盛り込まれていたからだ。「外務省機密漏洩事件」は、いつしか「西山事件」になったしまった》

 毎日新聞関連でもうひとつ。「海外の新聞と比べると、どこも同じようで個性が感じられない」。訃報の扱いである。「ネット時代の新聞の存在感を高めるためにも、編集局の仕組みと紙面の工夫を望みたい」

 整理部OB諸岡達一さん(87歳)は著書『死亡記事を読む』(新潮新書)で「全世界的、ボーダレスに、グローバル・スタンダードに、死去した人物のニュース価値を判断して、紙面に掲載するべきである」として、「死亡記事部」の設置を提唱している、と紹介している。

 諸岡さんは「死亡記事のページをつくるべき」と「新聞研究」1988年8月号に書いている。

 あとがきの最後に「移住した宮崎の海と空を愛でながら」。Zoomの顔写真の背景は、穏やかな青い海と空である。羨ましい!

(堤  哲)