2021年2月13日
キャンペーン・調査報道の統合デジタル取材センター「二金会」報告
編集局OBらの勉強会「二金会」が12日夜Zoomで開かれた。「デジタルシフトの現在地」と題して、統合デジタル取材センターの鵜塚健デスク(93年入社)と宇多川はるか記者(07年入社)がレクをしてくれた。
統合デジタル取材センターは2017年4月に発足した。スタッフは井上英介センター長(92年入社)以下デスク5人、記者21人。入社10数年組が主力で、女性が半数以上。前NY特派員國枝すみれさん(91年入社、ボーン・上田記念国際記者賞受賞)もメンバーだ。
官庁などの持ち場はない。キャンペーン報道、調査報道がすべてだ。
元テヘラン特派員で、『イランの野望~浮上するシーア派大国』(集英社新書)の著書がある鵜塚デスクは「記者の目」(1月20日)でこう書いた。見出しは、「2021年の焦点/コロナでメディア一変 デジタルの推進」。
《今、新聞を取り巻く環境は厳しい。発行部数の減少が続き、取材・発信の手法にもしばしば批判が集まる。それでも、多様な情報の価値や権力監視の必要性は変わらず、報道機関の役割はなくならない。新型コロナウイルス感染拡大の影響でさまざまな制約を受ける今こそ、新聞を含めて幅広くメディアのあり方を考える好機ではないだろうか。かぎとなるのはデジタル化の一層の推進と、男女とも働きやすい環境づくりだ》
これはパワーポイントで示されたキャンペーン報道だが、「汚れた桜」は出版され、早稲田ジャーナリズム大賞を受けることが内定したという。
もう1冊。『SNS暴力』。これは2020年9月毎日新聞出版社から刊行された。
SNS上で誹謗中傷を受けた末、女子プロレスラーの木村花さんが亡くなった事件を記者たちが徹底的な取材で掘り下げた。
鵜塚デスクが報告している。宇多川はるか記者は遺族取材などを主に担当した。
《今回の取材班では、私以外の記者5人全員が女性で、4人が子育て中。新型コロナの影響で子供の保育園や学校のスケジュールが変動し、負担が増える中、普段以上に徹底した効率化、工夫が求められた。硬い企画書や対面の会議は一切やめた。時折オンライン会議システムやSNSで情報交換し、走りながら方向性を考えた。各自の生活スタイルに合わせ、深夜や早朝に原稿やメールをやり取りすることもあった》
パワーポイントに、こんな略語があった。
▽PV増 → UU、CV増
PV=ページビュー(ページ数)
UU=ユニークユーザー(閲覧者数)
CV=コンバージョン(契約者数)
ミッションは、いかに読まれる記事をアップして、有料購読契約者を増やすか、である。
記事は、新聞よりも長い。書き方も違う。
▽大半は長文原稿(平均3,000字、長いと7,000字)
▽記者の主観を全面に入れる/ルポ「見る探る」
▽逆三角形から三角形。すべて見せず、関心を引きつける…
▽見出し、前文、序盤は命。
私(堤、64年入社)が現役時代、本紙の続き物は最大120行、大体100行が限界といわれた。1行15字の時代。1,500~1,800字である。その後、活字が大型化して、字数は制限され、短縮化した。 書き方も、まっ先に結論を書き、その後に説明を加えていく「逆三角形」。それではダメだというのだ。
新聞の購読者が減少する中、デジタル記事の購読者をどうやって増やすか。毎日ジャーナリズムをどう継承、発展させるか。統合デジタル取材センターをはじめ、すべての記者たちの健闘を期待したい。
Zoom参加者は、天野勝文(59年入社)堤哲(64)椎橋勝信(68)高尾義彦、中田彰生(69)奥武則(70)橋場義之、渋川智明(71)金子秀敏(73)中井良則(75)石郷岡建(74)磯野彰彦(78)高橋弘司(81)重里徹也(82)。
(堤 哲)