2021年8月23日
ナチュラリスト永瀬嘉平さん(80)のお酒と樹木とイラストと……

毎日新聞社を定年の1年前に辞めてからすぐに、飛行機を使わない世界一周の旅に出ました。88日間。「都民カレッジ」をはじめ「毎日旅行」「多摩サンピア」「桜美林大学カルチャー」「府中市民教室」「毎日文化センター」などで講師を務め、「気になる木の話」「日本人と木」「お話玉手箱」「方丈記の世界」などがテーマでした。しかし、コロナ禍で中止しています。
会社に勤務していた時に、他から本を6冊。毎月、3~4誌に連載したりしていました。目下は、「まなぶ」誌に、東京の名木や戦災木のイラストを連載しています。また西舘好子氏の「ららばい通信」に「男のひとり料理」を連載しています。毎日のように食べたものをイラストにしています。





テレビもラジオも洗濯機もすべて捨ててしまうと、実にのんびりとした生活が送れます。朝(朝とは言わないでしょうが)は、たいてい、午前3時に起きます。あれば冷酒一に軽い食事。6時ごろに朝風呂。駅まで歩いて1時間。「スターバックス」でコーヒー、原稿書きなど。その後、散歩したりしています。1日15キロ~20キロは歩いています。バスは10キロ以内は使いません。月に平均500キロ(東京~大阪間)、歩いています。
大学時代から食前酒を飲み続けているので、途中で必ず〝ガソリン〟を入れます。
私が主宰し22年間170回続いている「ビャクシン会」では、7月31日、奥多摩へ行きました。「川合玉堂美術館」など巡りました。
目下、「世の不思議を見ること やゝ度度(たびたび)なりぬ」(これは鴨長明の「方丈記」の一節)にあやかり、原稿を書いています。250枚ぐらい書きました。
「母が遺影の中に出てきた」
「風呂の蛇口をひねると、お経が聴こえる」
「四脚のヘビを見た」
「三億円」犯人と一杯
「マフィアのボスとコニャックの一気飲み」
「暴力団組長とあわや乱闘」
「有珠山噴火」などなど
肉眼で見えない小石に古代文字(表採)
世にも不思議なことに出合いました。
ざっとこんな日常です。
(永瀬 嘉平)
※永瀬嘉平さんは毎日グラフ、サンデー毎日在籍が長く、カメラ毎日編集次長、重要文化財事務局次長などを歴任。著書は『百木巡礼』(佼成出版会・序文は白洲正子さん)『日本の瀧』(毎日新聞社・串田孫一序文)『かくれ滝を旅する』など。「日本の滝100選」選定委員。
ボールペン一本で描くスケッチ展「東京の名木・被災木」を昨年10月、毎日新聞社1階の「花」で開催。
《「タウンユース」相模原・東京多摩版 2017年9月21日号から転載》
10月から桜美林大学多摩アカデミーヒルズで生涯学習講座の講師を務める永瀬 嘉平さん
「自然の魅力」多くの人に
○…10月から桜美林大学多摩アカデミーヒルズで開講する秋期生涯学習講座。その中の特別短期講座のひとつ「60本の木」の講師を務める。日本の国土の約68%を占める森林面積。2千~3千本あるとされる木の種類の中から「これを知っていればどこに行っても困らない」という”60本の木”を写真や実物の葉っぱなどを使って紹介する予定だ。「今、改めて木と日本人のかかわり合いを見つめることができれば」と笑顔で話す。
○…東京は目黒の生まれ。幼い頃から人と同じことが嫌いで「人に連れられて歩いたことがない」という。大手新聞社で記者、編集次長を務め、日航ジャンボ機墜落事故や有珠山噴火、原発問題など数々の現場を追った。「自分の目で見たもの以外は信じない」。あらゆるものに興味を持つ好奇心旺盛な性格。その中のひとつが自然だった。退職後、日本、世界各地を歩き回った。学生時代から本を読むのが好きで、本で得た知識と実際に見た経験を活かし、数々の紀行集や写真集を手掛け、都市圏のカルチャースクールなどで講師を務めてきた。
○…”ナチュラリスト”、直訳すると自然愛好家。自身の肩書について「NHKでそう紹介されたから」と苦笑い。各地を見て回る中で”世界唯一の木の文明国”と日本を例えた建築評論家の川添登氏の言葉を実感した。古くからある木造建築の神社仏閣などがその一例。多摩でみても昔は竹林が多く、めかい篭などの独自の工芸品などが生まれている。「沢山の木があるけど詳しくは知られていない。今、多摩にある木も外来のものばかり。木を知ると文学なんかも深く知ることができますよ」と微笑む。
○…記者時代から文化人との交流が深く今も続く。その秘訣はお酒だとか。「上司でも飲まない人とは話さない」と、いたずらっぽく笑う姿は若々しい。その豪放な性格でこれからも各地を見て回り、自然の魅力を多くの人に伝えていく。