2022年3月28日
お得意の環境をテーマに熱弁!原剛・早大名誉教授、84歳
1962年入社の原剛さん(84歳、早稲田大学名誉教授、早稲田環境塾塾長、毎日新聞客員編集委員)が3月25日、JR有楽町駅前の日本交通協会で講演した。
演題は「文化としての『環境日本学』—いのちはめぐる―」。
会場の日本交通協会の隣に、かつて毎日新聞の東京本社があった。まず「懐かしい場所に戻って来た、という感じです」。
1971年7月1日、環境庁(現環境省)が発足と同時に担当記者に。環境問題がライフワークとなったのだ。98年、早大大学院アジア太平洋研究科教授。2008年定年の際、「早稲田環境塾」を創設して塾長として講座を継続した。
現役記者のときは、まず水俣病。有機水銀中毒によるネコ踊りが有名になっていた。
環境とは自然、人間、文化からなる。その三要素を統合、文化としての「環境日本学」の実体を現場から模索した、という。
その現場、山形県高畠町の有機農業、北海道標茶町のシマフクロウの森づくり。
高畠町の星寛治さん(86歳)は、74年から若手農家38人とともに無農薬有機農業を実践。有吉佐和子の小説「複合汚染」にも取り上げられた。生産者と消費者を直接つなぐ独自ルートをつくった。高畠町の教育委員長となって、全小中学校に学校農園・水田と植樹する森を設置した。
農園でできた無農薬野菜や果物は、生徒たちが毎日新聞1階で販売したが、わずかの時間で売り切れた。「早稲田環境塾」の「たかはた共生プロジェクト」の一環だった。その根底には生命を育む喜び、命の連鎖に希望を託す気持ちがあった。
北海道釧路湿原のシマフクロウは絶滅の危険の最も高い「絶滅危惧」類に指定され、現在生息しているのは165羽。標茶町の「シマフクロウの森を育てよう!プロジェクト」は、「シマフクロウを絶滅から救うと同時に、川・海の環境を浄化し、流域の酪農・漁業、さらには地域の生活を守ることにつながる」というのだ。
原さんの熱弁は、1時間10分に及んだ。最後は「人間の幸せとは」と、文明論に繋がっていったのだが、講演終了後、元国鉄官僚が「お若いですね、感心しました」と感想を述べたのが印象的だった。
(堤 哲)