2023年1月31日
元モスクワ特派員、飯島一孝さんがフェイスブックで楽しむ「仲畑流万能川柳余聞」
毎日新聞朝刊3面の左下隅に毎朝、「仲畑流万能川柳」が掲載されているのは皆さんご存知の通り。でも、その中から筆者が独断と偏見で選んだ川柳をフェイスブックに掲載しているのをご存知でしょうか。近頃、このFB版の読者がジワジワと増えているらしいというので、編集の方から「連載を始めた動機や連載に対する反響を寄稿してほしい」との依頼を受けました。そこで投稿者の川柳を参考にしながら、万能川柳の魅力を深掘りしてみようと思います。
私がその日の朝刊に掲載される18点の中から4点を選んでFB版に掲載する企画を始めたのは2021年秋からです。それまでは毎朝、万能川柳を読んでいて、「面白いなあ」と思っていただけですが、そのうちに「これは是非、毎日新聞の読者以外の人にも教えてあげたい」と思うようになりました。
私も七十年以上生きてきて、近ごろ痛切に感じるのは、世の中の空気がとても重苦しくなってきたなということです。戦争、災害、凶悪犯罪などの記事が載っていない日はないので、せめて朝だけでも、そういう気分を笑い飛ばしたい、そんな川柳をピックアップしたいと思いました。以前、「笑いたいだけで川柳やってます」という投稿句がありましたが、まさにその通りです。
さらに、生活感のある句をできるだけ選ぼうと毎朝、妻にまず選んでもらい参考にしています。その上で、私なりに感じた投稿句の独創性や奇抜さを5・7・5の川柳っぽくして投稿句の後に載せています。いわば自分なりの選評のつもりです。
選んだ4句のうち、一番面白いと思った句を「本日の傑作」、二番目の句を「次点」、三番目を「三席」、最後に一風変わった句などを「選外」と分けました。
これまでの投稿句で、特に夫婦で大笑いした、あるいはクスクス笑ってしまった句をいくつか挙げてみましょう。
「ゴキブリの一か八かの死んだふり」
「偶数の月の半ばに孫来たる」
「肝心なものだけいつも出てこない」
「百円だ拾おうとしたら木漏れ日だ」
「大声で梶田(かじた)呼んだら大騒ぎ」
「老い二人落ちた錠剤探す朝」
FB版に自分が選んだ投稿句を載せ始めてから、川柳を読んだ読者から感想が寄せられ、元気をもらっています。中でも、毎日のように感想を載せてくれる熱いファン(?)が何人かいます。このうち、毎日必ず感想を寄せてくれる方が北海道在住の元大学教授です。私より年配ですが、時には自分で作った川柳も載せてくれます。こうした人たちに支えられながら、なんとか毎日続けているというのが実情です。
こんな時代でも、笑って暮らしたい、そんな希望を叶えてくれる「仲畑流万能川柳」を応援したい方はぜひ、毎日新聞とともに、FB版を見ていただければ幸いです。
(飯島一孝 いいじま・かずたか 74歳。2008年、外信部編集委員で定年退職)