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2017年12月18日

帰省ラッシュが間もなく

 平田明浩東京本社写真映像報道部長(かつての写真部長)が、「心に残る写真」というテーマで東京写真記者協会のHPにエッセーを書いている。

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帰省客で混雑するホームで、出迎えの親類に駆け寄る女の子 (1998年12月、JR名古屋駅で)

 1998年12月29日、JR名古屋駅の新幹線ホーム。〈デスクから帰省ラッシュの取材を依頼されて、眠い目をこすりながら徒歩数分の名古屋駅に向かった。

 ホームへの階段を上り、まずは帰省取材の王道であるホームが混雑する様子を撮影しようと脚立に乗って中望遠レンズを構えた。その時、東京方面からきた新幹線がタイミング良く到着した。ホーム上には大勢の帰省客に混じって初老の男性が立っていた。新幹線の扉が開いた。次の瞬間、車内から一人の女の子が両手をいっぱいに広げて勢いよく初老の男性に駆け寄った。あっという間の出来事。とっさに3コマ、シャッターを切った。撮影を始めてまだ数分だ。カメラには36枚撮影できるフィルムが入っていたので、取材を切り上げるには早い。でも、なんだかいい写真が撮れている気がして、急いで会社に戻った〉

 会社に戻り、ソワソワしながらフィルムを現像した。長いロールフィルムのまま、ルーペで確認すると、女の子が祖父に向けたなんともいえない笑顔が写っていた。

 写真は東京本社発行の新聞にも掲載された。…掲載後、「この写真を見て元気が出た」という内容のお便りをたくさんいただいた。写っている女の子と同じ年頃の孫を持つ方からのものが多かった。

 その後の私のカメラマン人生はというと、俗にいう歴史に残る瞬間に取材者として何度も立ち会い、撮影をしてきたつもりだ。だが、本当に心に残る写真は、会社から1キロも離れていない徒歩で行ける場所での写真なのである〉

(堤  哲)