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2018年2月2日

読売文学賞に輝く 米本浩二著『評伝 石牟礼道子―渚に立つひと―』(新潮社)

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 「評伝を、私に、書かせていただけませんか」。

 石牟礼道子さんに、そうお願いしたのは2014年の初めだった。

 これが書き出しである。

 「著者は3年にわたって集中的な密着取材を行い、400時間をゆうに超える時間を石牟礼さんとともに過ごし、彼女の全体像に迫った」と、読売新聞の受賞者紹介欄にある。

 「苦海(くがい)浄土 わが水俣病」で知られる熊本市在住の作家で詩人、石牟礼道子さん(90歳)の初の本格的評伝だという。

 著者米本浩二さんは、毎日新聞西部本社学芸グループの記者である。57歳。

 同書の著者紹介によると、徳島県庁正職員を経て早稲田大学教育学部英語英文科卒。在学中に『早稲田文学』を編集、とあり、毎日新聞入社は1987年。筑豊支局などを経て2010年から西部本社で文学を担当している。

 毎日新聞の書評では「冷たい高みからではなく、著者自身が腰まで泥に浸(つ)かって対象に食い込む。一行のムダもない迫真性が、そこから生まれた」と絶賛。

 作家の池澤夏樹さんは、暮れの毎日新聞読書面で「2017年この3冊」に挙げた。

 池澤さん個人編集の「世界文学全集」は、日本人作家は石牟礼道子さん1人で、「苦海浄土」全3部が収録されている。米本さんは、池澤さんを「北海道のアニキ」と呼んで畏敬しているというのだ。

 贈賞式は2月21日午後6時半から帝国ホテルで行われる。

 その石牟礼さんが2月10日亡くなった。90歳だった。

 米本記者は、毎日新聞に「評伝」と、亡くなるまで最後まで寄り添っていたことを綴った。〈1月31日、亡くなる10日前のこと。ベッドに横になった石牟礼さんが寝息を立て始めた。そっと帰ろうとした私を「あの」と呼び止め、「筆記してください」と言う。私は急いでノートを広げた。石牟礼さんが語った言葉を以下に記す。

 「村々は 雨乞いの まっさいちゅう 緋の衣 ひとばしらの舟なれば 魂の火となりて 四郎さまとともに 海底の宮へ」〉

(堤  哲)