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2018年8月15日

小野文恵アナが見た祖父の戦場

 社会部の先輩、野村勝美さん(89歳)が「浜田山通信」№223で、「非戦」を訴えている。
 このHPに転載したい。      堤  哲

 8月は原爆と戦争の悲惨を考える月である。異常気象の猛暑と集中豪雨のニュースをききながらクーラーのきいたリビングで毎日、テレビのドキュメンタリー番組に見入っていた。毎年ヒロシマ、ナガサキを見てきたはずだが、なぜかことしはより充実した番組が多かったように思われた。多分平成も最後だし、私のように戦時を経験している者が少なくなっていることも関連しているのだろう。

 私が見た番組名をあげておく。どれもすごい作品だ。何度再放送されてもよい。機会があれば何度でも見たい。ほとんどは録画したので、その気になればいつでも見れる。

 最初はことし亡くなった映画脚本家「早坂暁を探して」。昔ごひいきだった「桃井かおりが暁さん遍路ゆかりの地・松山の旅」。同じ4日の夜、「福井地震70年」。福井は終戦の年に空襲で全焼し、3年後地震で全滅している。5日にはTBSが「終戦SP・学徒出陣10万人が軍隊へ▽攻撃命令▽地上戦▽太平洋戦争の真実とは」。ほぼ同時刻にNHKがBS プレミアム「映像の世紀 独裁者ヒットラー、ムッソリーニ、スターリンの狂気」。これは何度オンエアしてもよい。独裁者はどのようにして民衆をかり立て、戦争で独ソ双方に4千万人もの犠牲者を出したか。関連してNHKEテレ「ヒトラーの専用列車」アメリカ号も興味深かった。

 原爆関係では他に8日NHKBS「ヒロシマの被爆樹木ニューヨークへ渡る」。9日「幻の原爆ドーム・ナガサキ戦後63年目の選択」。ETV特集「赤い背中が残したもの」。そしてなんといっても圧巻は12日NHKBS「"悪魔の兵器”原爆なぜ誕生? 科学者の闇 日本へ落とせ・・・誰が?」。マンハッタン計画の開始から完成、実験までを計画し実行したロスアラモス研究所とロバート・オッペンハイマーはじめ1200人の若き科学者やルーズベルト、トルーマン、オッペンハイマーの孫も登場する。アメリカがすべての資料を残していることにも感心するが、NHKBSの取材能力は絶賛に値いする。番組は最後に「人類はまた同じ悲劇をくりかえしていくのだろうか」としめくくっていたが、絶対にくりかえしてはならない。

 敗戦関連では8日NHKプレミアム「海の墓場トラック島」、12日「戦争孤児の闘い」、13日「船乗りたちの戦争」がいずれも出色のドキュメンタリー、年の故もあるだろうが涙がとまらなかった。

 もう一つ、NHKスペシャル、11日の「祖父が見た戦場」がすばらしかった。看板アナの小野文恵がフィリピンのルソン島で戦死した祖父景一郎の足跡を母公子と訪ね回るルポ。文恵はもちろん34歳で死んだ景一郎を知らない。生き残った戦友や、日本兵の死体を数えて記録した米軍の資料を取材し、ルソン島での祖父の足跡を辿る。そして旅の終わり、一人でマニラのホテルを訪ねる。そこはフィリピンの少女たちが日本兵の性暴力を受けた場所だった。どんなことがあっても戦争だけはやってはならない。