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2018年12月7日

『姫君たちの明治維新』の岩尾光代さん 毎日新聞夕刊学芸面に登場

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岩尾光代さん

 毎日新聞2018年12月5日夕刊学芸面に『姫君たちの明治維新』(文春新書)を出版した岩尾光代さんが紹介された。以下再録。

 石川啄木の短歌<新しき明日の来るを信ずといふ-->に込められた思いを書名に用いて、山口シヅエら初の女性衆院議員39人の誕生秘話を描いた歴史ジャーナリスト・岩尾光代さんが、明治150年にあたる今年の秋、再び野心作『姫君たちの明治維新』(文春新書)を世に送り出した。焦点を当てたのは大名家と皇族の姫君31人。前著と共通するのは、歴史に翻弄(ほんろう)されながらも気高く生きた女性の歩みである。

 歴史の闇に埋もれがちな声を丹念な調査で拾い上げた著者は長年、ベストセラー写真誌『1億人の昭和史』(毎日新聞社)シリーズを担当した人。膨大な古写真を整理し、「昭和」という激動の時代をひもといてきた編集者としての自負が難業に挑ませた。「文字に残る記録だけでなくて、時代の空気感を再現しなければと思ったのです。身分にかかわりなく、歴史の影となった声を掘り起こすこともジャーナリズムの役割だと思い、姫たちへの関心を持ち続けていました」

 明治維新を振り返る時、近代国家への階段を上り始めた正史に目は向きがちだが、著者の視点は裏面史へと向かう。旧皇族・華族の親睦団体「霞会館」の信頼協力を勝ち得て約40家の蔵を調べたところ、女の人の記録がほとんど残っていないことに気づいたという。

 なぜ姫君たちは語られることが少なかったのか。生まれながらに政の「駒」として、権力闘争や政略結婚の犠牲になった側面が強かった。何よりも「お家第一」であり、己の気持ちは二の次とされた時代である。

 「系図に名前もなく、ただ『女』とだけ記されたケースもあった。姫たちの写真を見ているうちに脳にインプットされて、彼女たちが『外に出して!』と訴えている気がしたほどです」

 全6章で構成。中でも終章の「戦火のかげで落城の妻たち」は取材者魂を感じさせた。「『人に歴史あり』と言いますが、歴史は人間によって作られるものなんです。人生にどう向き合ったか、その姿勢を意識して描きました」。時代に真正面から立ち向かった足跡がここに、確かにあった。【中澤雄大】

(堤 哲)