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2019年5月5日

蘇った小林弘忠絶筆の『満州開拓団の真実』

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テレビ朝日「やすらぎの刻」の画面から

 小林弘忠著『満州開拓団の真実』(七つ森書館)は、長野県下高井郡の出身者で構成された「高社郷開拓団」の集団自決事件に焦点を当て、正しい情報を与えられず、美名の下に入植した人々の悲劇を通じて満蒙開拓という「国策」の罪を改めて浮き彫りにする。

 著者は元毎日新聞社会部記者。定年退職後『逃亡 「油山事件」戦犯告白録』(毎日新聞社)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した。小林さんは校正作業を済ませた7月半ば、刊行を待たずに80歳で病没したため、本書が絶筆となった。

――これは、毎日新聞2017年9月28日夕刊に掲載された記事だが、テレビ朝日で月~金曜日に放映されている倉本聰脚本の「やすらぎの刻」で、この絶筆本が映し出された。

 ドラマで石坂浩二が演じる脚本作家が、満州開拓団のことを書くための資料に使っているという想定の場面だった。

 コバチュウさん、遺作が活かされていますよ!

 コバチュウさんとは社会部のサツ回りでほんの一時期一緒だったが、原稿を書くのが早かった。筆力があった。著作は20冊を超えているか。とにかく良く調べている。『新聞報道と顔写真―写真のウソとマコト』(中公新書)は調査部長の経験が生かされた。

 怒った顔を見たことがない。人格円満な先輩記者であった。

(堤   哲)