2020年4月11日
大林宣彦監督の訃報で、映画「女ざかり」を思い出した!
4月10日亡くなった映画監督の大林宣彦さん、82歳。
毎日新聞HPには、この写真が載っていた。説明は――。
映画「女ざかり」の撮影が行なわれた毎日新聞東京本社編集局内で、撮影の合間、大林宣彦監督と談笑する主演の吉永小百合さん =東京都千代田区の毎日新聞東京本社で1993年12月14日、木村滋撮影
で、松竹映画「女ざかり」のことを一気に思い出した。
この映画は、翌94年6月18日に封切られた。原作は丸谷才一のベストセラー小説『女ざかり』(文藝春秋刊)。主演の吉永小百合は、新聞社の女性論説委員。相手役の三國連太郎は、事件記者あがりの「書けない論説委員」という設定。
公開初日の舞台挨拶で、大林監督は主演の吉永小百合さんに「あなたのシワを撮りたい、と言ったんですよね」。
撮影は、16mmカメラ3台を同時に回して行われた。普通、映画の撮影は35mmのカメラ1台だ。カット数3400。1時間58分の映画だから、単純計算で1カット2・08秒。ちゃかちゃかとやたら画面が変わる。「ドキュメンタリータッチの不思議で素敵な映画となった」と小百合さんは感想を述べた。
ヨドチョウさん、映画評論家の淀川長治は「この映画の印象は小百合がメシを口にかきこむこと、かきこむこと、口にメシをほおばって、口の中にメシを押しつぶしているところの吉永小百合。それと頭はいいが文体がまずい、同じく記者の三國連太郎の目の下の深いシワ」と、産経新聞の映画評に書いている。
この映画のロケが毎日新聞社内で行われたことから、松竹と毎日新聞、それに電通の3社でキャンペーンのアイデアが練られ、小百合さんにエッセーを週一で連載してもらうことになった。「男ざかり女ざかり」。その原稿のキャッチャー役が、ヒマな編集委員だった私に回ってきたのである。
ワープロが出始めのころ。小百合さんは手書きの原稿をファックスで送ってきた。
第1回は作家の宇野千代。見出しは「あなたはケチですね」。
男性に積極的になれない臆病な小百合さんが、結婚歴4回、90歳を超えた恋多き女流作家に「あなたはケチですね」と叱られたというのだ。
第4回に三國連太郎さん。その書き出しは「書けない新聞記者がいることを『女ざかり』を読んで知った」。
書けない新聞記者、なんて言われるとギクリとする。
連載は4か月余、17回で終わった。小百合さんが〆切に遅れることは1度もなかった。
一番の思い出は、テレビ番組撮影のロケ現場ニューヨークに着いて行ったこと。映画「女ざかり」で共演したNY在住の松坂慶子を訪ねるという設定で、「連載の原稿はNY渡しと言っています」と編集局長に申し出たら、出張旅費を出してくれたのだ。いい時代だった。
ちなみに他に誰を取り上げたか。女性は、岡本綾子、竹宇治聡子(旧姓・田中)、ジェシカ・タンディ、小川誠子(囲碁)、松坂慶子、高樹のぶ子、土井たか子、杉村春子。
男性は、清原和博、小澤征爾、片岡孝夫、篠山紀信、三宅一生、丸谷才一、和田誠。
候補者リストには、高倉健らもあったが、残念ながら…。
(堤 哲)