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2020年8月20日

女性報道写真家第1号の誕生に、社会部OBの誘い

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9月1日で106歳になる笹本恒子さん(読売新聞から)
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100歳を迎えた時(2014年筆者撮影)

 日本初の女性報道写真家・笹本恒子さん(105歳)が8月20日付読売新聞朝刊の「戦後75年 終わらぬ夏」番外編の1ページ特集で紹介された。

 元気である。《今、本を書きかけています。わたくし、ポンポコたたく機械は使えないので手書き。書きかけてはやめ、書きかけてはやめ……》

 2012年に毎日新聞社から自伝『お待ちになって、元帥閣下』を発刊した。

 その本の献辞に《私を写真の世界に導いてくださった林謙一さんに、この本を捧げます》。

 林謙一(1906~80)は、NHKの朝の連続テレビ小説「おはなはん」の原作者として知られる。早大理工学部建築学科を卒業して「東京日日新聞」社会部記者となった。国鉄の記者クラブの時、忠犬ハチ公を最初に紹介した、と自著に書いている。(その記事を犬研究家の社会部旧友仁科邦男が追っているが、記事の発見に至っていない)

 その後、内閣情報部に転職、1938(昭和13)年7月「写真協会」設立にかかわり、その年2月創刊の『写真週報』編集にあたった。 笹本さんは、報道写真家になったきっかけをこう話している。

 《林さんは話がお上手で、『LIFE』創刊号(1936年11月)の表紙は女性写真家マーガレット・バークホワイトの作品。ここ(写真協会)に入って報道写真家になりませんか、といわれました。報道写真家という言葉も初めて知ったのですが、林さんにあおられて、やってみたいと思います、と返事をしてしまったのです。それが写真家になるきっかけでした》=堤哲著『伝説の鉄道記者たち』。

 読売新聞の特集で紹介された笹本さんの作品は5点。「ヒットラー・ユーゲント来日」、「日独伊三国同盟夫人祝賀会(東条英機夫人が写っている)」(ともに1940年)と戦後の「銀座4丁目P.X.」「米軍専用車」(鉄道)、「マッカーサー夫人」。

 そしてこう述べている。《戦争と聞いてまず思うのは、愚かなことをしたということ。人間の命をたくさん奪い、大事なものをたくさん壊した。戦争はするものじゃない。つくづく、そう思います》

(堤  哲)