2020年9月24日
50年前の早稲田の街の写真もあります—毎日フォトバンク
コロナ禍で、早稲田大学は10月18日(日)に予定していたホームカミングデー・稲門祭を中止した。
ホームカミングデーには校友のだれもが参加できるが、これまで卒業50年目、45年目、35年目、25年目、15年目の校友には招待状を送っていた。
早大校友会が発行するコミュニケーション誌「早稲田学報」10月号には、卒業50年目の2020稲門祭実行委員長である作家の三石由起子さん(81年文学部卒)が稲門祭への思いを綴り、その先に4ページにわたって「50年ほど前の早稲田の風景」写真が8枚掲載されている。
ホームカミングデーで母校へ行けないので、せめて当時の早稲田の風景を懐かしんでもらおうという企画であろう。
その写真説明に、「1968年10月20日池田信撮影、毎日新聞社提供」とクレジットが入っている。
「池田信って、写真部OB?」
ではなかった。池田さんは元東京都庁のお役人。写真を撮ったのは都立日比谷図書館の資料課長時代。東京の姿を記録しておきたいと、カメラを肩に東京の街をさまよったという。池田さんは1987(昭和62)年に75歳で亡くなっているが、その後、写真を寄贈された毎日新聞社は、池田信写真集『1960年代の東京—路面電車が走る水の都の記憶』を2008年3月に発行している。
編集人は出版写真部・高橋勝視、制作スタッフ・編集に出版写真部平嶋彰彦、校閲・写真部横井直樹、編集協力に編集局整理本部・松上文彦の名前がある(敬称略)。
寄贈のきっかけは、松上さんの親友の夫人である今村裕子さんが池田さんの姪にあたったこと。子どものいなかった池田さんの死後、写真資料を引き取って10数年保管していた今村さんは、転居にあたり始末しようと考えたが、ひょっとして新聞社で使えないかと相談してきたのだ。とりあえず調査部あてに送ってもらったところ10数個の段ボール箱がどさっと届いて、あまりの分量にびっくり。
その中には東京を写した2万数千点のネガと密着の紙焼き、そして撮影日時と撮影場所が綿密に記録されていた。寄贈を受けたその写真を調査部にいた森岡義人さんが、数年がかりでデータとして毎日フォトバンクに登録した。それを出版写真部の平嶋彰彦さんが精査し、川に沿った水辺の風景と都電の走る街並みを中心に400枚をピックアップしてまとめた。東京の街を知る資料的な価値のきわめて高い写真集で、2008年の発行以来、増し刷りを重ね、毎日新聞社から分社した毎日新聞出版からは2019年2月に新装版が発行されている。池田さんの写真は毎日ネットでも好評で、堅調なアクセス数を記録している。早稲田大学周辺で撮影した写真も、毎日フォトバンクに登録されている。
毎日新聞の懐の広さを感じる話題ではないだろうか。
(堤 哲、松上 文彦)