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2021年3月8日

28日まで、人気の木版画「吉田博展」(東京都美術館)

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東京都美術館の看板

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 ————世界各国を旅し、雄大な自然をとらえた吉田博(1876~1950)のみずみずしい木版画は、アメリカをはじめ国外で早くから紹介され、現在も高い評価を誇ります。イギリスのダイアナ妃や精神科医フロイトに愛されたことでも知られています。日本に生きる画家として、世界に対抗しうるオリジナルな「絵」とは何かを模索し続けた末に生まれた、新しい木版画をご覧いただきます。

 これは「没後70年 吉田博展」(3月28日まで東京都美術館)のHPにある紹介文だが、会場に故ダイアナ妃の執務室での写真が飾られていた。そのバックに吉田博の木版画が2枚。右が瀬戸内海の「光る海」。左は同妃が1986(昭和61)年に来日した際、自ら購入した「猿澤池」だ。

 飾られているのは、ロンドン・ケンジントン宮殿の同妃の執務室。1987(昭和62)年5月に発行された皇室専門誌『Majesty』に掲載された、とHPにある。来日の翌年である。

 吉田博の木版画のスゴサは、複雑な色彩を表現するために、摺りを何回も重ねることにある。一番摺数が多いのは、日光東照宮の「陽明門」(1937年)。なんと96回摺りを重ねた。

 2番目は、亀戸の天神さんの太鼓橋を描いた「亀井戸」(1927年)の88回である。

 その平均は30数度に及ぶ。同じ版木を使って、摺色を替えることで刻々と変化する大気や光を表現。巨大な版木を使って特大版も制作している。

 そのあくなき探究心で独創的な木版画を生み出した、と解説にある。

 特大版では「渓流」(1928年)の水の流れのダイナミックさに圧倒される。

 会場に写生帖が何冊も展示されているが、どれも細密を極めている。とりわけ富士山や北アルプス穂高連峰などのスケッチは、息を呑むほどといったら大袈裟か。

 吉田は山好きで、二男に「穂高」と名付けたほどだ。

 23歳でアメリカに渡り、ボストン美術館、デトロイト美術館で展覧会を開き、さらにヨーロッパへ渡ってロンドン・パリ・イタリア、再びアメリカに戻るなど、31歳までの6年間を海外で過ごした。戦後、洋館の自宅が進駐軍に接収されそうになると、得意の英語で接収を免れ、その後、進駐軍が集う芸術のサロンとなったという。

 痛快な人生である。

 展示は200点ほど。閉幕まで3週間。上野へ行って下さい! ヘーとうなること間違いありません。

(堤  哲)