2021年3月30日
『チェリー・イングラム』阿部菜穂子さんがZoom講演会
イギリス在住の社会部旧友・阿部菜穂子さん(81年入社)が3月26日午後9時(現地同日正午)から「チェリー・イングラム―日本の桜を救ったイギリス人」を日本語で講演した。大和日英基金(Daiwa Anglo-Japanese Foundation 、1988年設立)主催のZoom講演会。
「参加64人。50人の定員を大幅に上回り、これまでのウェビナーで参加者が一番多かったそうです。そのほとんどが日本とイギリス。日本では東京以外に秋田や岩手、大分、福岡、京都の方がいらっしゃいました。在ロンドン日本大使館の公使の方を含め2名の大使館員もおられました」と阿部さん。
東京ではソメイヨシノが満開だが、イギリスでは3月半ばから桜が咲き始め、5月半ばまで2か月間もお花見を楽しめる。英国人園芸家コリングウッド・イングラム(1880-1981)=写真・右=が20世紀初めに日本の桜の虜になり、明治・大正・昭和期に3度訪日して、多種類の桜の穂木を持ち帰ったことによる。英国の桜は多種多様で、「太白」などは日本に里帰りしているのである。
阿部さんは、最後に「日英桜植樹プロジェクト」で、すでにイギリス国内の120か所に4241本の桜が植樹され、来年春までに目標の6000本を達成することを明らかにした。
このプロジェクトは、日本人から6000本の桜をイギリス人に贈呈するもので、在英日本人による実行委員会が2017年から推進している。日英協会(東京・千代田)が資金を調達した。米ワシントンのポトマック河畔の桜並木のような名所を英国各地につくる構想だ。日英友好事業である。
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メールで阿部さんに感想を求めると——。
《パワーポイントがうまくスタートしなかったのでひやひやしましたが、無事に終えることができてよかったです》
《英語でのウェビナーも何度かやりましたが、その時は英国のほか米国やオーストラリア、アジア、中東などからも参加者がありました。日本語となるとやはり日本語のできる人は限られるようです》
《私としては、今のところチェリー・イングラムの本は日本以外の国からの反響のほうがずっと大きいので、もうちょっと日本でも知られたらいいなと思います。日本の桜が親善大使として外国に広まっていくのはうれしいです。そして世界のなかでは、日本はやはり、こういった「ソフトパワー」で勝負すべきだと思います。争いではなく、平和、友情、愛情。人と人をつなぐ絆。日本を代表して、桜にそんなシンボルになってほしいと思います。(もうなっていると思います)》
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『チェリー・イングラム――日本の桜を救った英国人』(岩波書店)は2016年、第64回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した。
日本語版を全面的に英語で書き直し、2019年春、英国、米国、オーストラリア等英語圏で’Cherry’ Ingram—The Englishman Who Saved Japan’s Blossoms をペンギン社から出版。さらにドイツ語、イタリア語、オランダ語、ポーランド語、スペイン語に翻訳され、2022年には中国語版が出版される予定だ。
阿部さんのHPにある各国での反応・称賛——。
*BBC Radio4: ‘Book of the Week’ March 2019 (BBC ラジオ4‘ブック・オブ・ザ・ウィーク’ 2019年3月)
*The Sunday Times: Best Gardening Books, 2019(英サンデー・タイムズ紙 2019年最優秀ガーデニング書籍)
*NPR's Science Friday: Best Science Books, 2019(米公共ラジオ放送、2019年最優秀科学書籍)
*The Irish Times: Best Gardening Books, 2019 (アイルランド・アイリッシュ・タイムズ紙 2019年最優秀ガーデニング書籍)
*PopMatters: Best Non-Fiction Books, 2019 (ポップ・マターズーー米国で人気のあるポップカルチャーに関するウェブサイトーー 2019年最優秀ノンフィクション)
*The Daily Mail: Best Books for Nature Lovers, Christmas, 2019 (英デイリー・メイル紙 2019年12月 自然愛好家に最適の書籍)
*Woodland Trust: Best books of the Year 2019 (ウッドランド・トラストーー英国最大の環境保護団体――2019年最優秀書籍)
(堤 哲)