2021年5月24日
日本画家・鏑木清方(文化勲章受章者)は「東京日日新聞」創業者の息子
「コロナ禍で休館を余儀なくされ、みなさんに会場をご覧いただけないのは残念でなりません...」「せめてテレビで、展示内容の充実ぶりを知っていただけると嬉しいです」。
東京ステーションギャラリー(東京駅丸の内北口)HPに、学芸員がやるせない気持を吐露している。鏑木清方の作品を目玉にした「コレクター福富太郎の眼—昭和のキャバレー王が愛した絵画」展。4月24日に開幕したが、展観されたのは翌25日までの2日だけで、緊急事態宣言の発令で臨時休館が続いている。会期は6月27日までだ。
休館中に、NHK Eテレ「アートシーン」や民放局の番組でも紹介されたが、YouTubeでも見られる。
ロバート・キャンベルさんの「キャンベルの四の五のYOUチャンネル」だ。
日本文学者で東京大学名誉教授のキャンベルさんは、福富太郎さん(本名=中村勇志智、1931~2018)に直接会って、話を聞いている。その時のテープを再生するとともに、この展覧会を監修した山下裕二さん(美術史家・明治学院大学教授)が解説している。
福富太郎は、1964年の東京オリンピック景気を背景に、全国に44店舗にものぼるキャバレーを展開して、キャバレー王の異名をとった実業家。美術品蒐集の手始めは、鏑木清方(1878~1972)の日本画で、清方からの手紙も展示されている。
清方は、毎日新聞の前身「東京日日新聞」を創設した戯作者・条野伝平(1832~1902 山々亭有人)の三男。1954(昭和29)年に文化勲章を受章している。鎌倉市に鏑木清方記念美術館(1998年開館)がある。
「東京日日新聞」は、1872(明治5)年2月21日創刊だから、来年創刊150年を迎える。社会部旧友・今吉賢一郎著『毎日新聞の源流』(毎日新聞社1988年刊)によると、創刊したのは、かぞえ41歳の条野の他、35歳で貸本屋の番頭西田伝助(1838~1910)、40歳の浮世絵師・落合幾次郎(芳幾、1933~1904)の計3人。その後、44歳で地本問屋(出版・販売会社経営者)の広岡幸助(1829~1918)が加わった。
(堤 哲)