2021年8月30日
元印刷部長の長男、登山家・山野井泰史さんがビッグコミックに登場
単独かつ無酸素で岩壁に挑戦する登山家として世界に知られている山野井泰史さん(56)が、小学館発行「ビッグコミック」2022年新年号から「新連載 登山家・山野井物語(仮)」と題して登場します。泰史さんは、元東京本社印刷部長・山野井孝有さん(89)の長男です。同誌の9月10日号に写真のように予告が掲載されました。原作者・よこみぞ邦彦さんは「ゴルゴ13」の脚本も手掛けているとのことです。
今年春、よこみぞ邦彦さんは、父・孝有さんの千葉の自宅を訪ねて、5時間以上にわたって取材しました。泰史さんが死と隣り合わせて登山家として成長していく過程で、父母が体験した苦しみと喜びもまた描かれるのではないかと思います。
父・孝有さんは著書「振り返れば波乱」(自費出版・2005年刊)、「いのち五分五分―息子・山野井泰史と向きあって」(山と渓谷社・2011年刊)などで、登山にのめりこんでいく泰史さんとの葛藤とともに、控えめながら息子自慢を書いています。一方、母親の孝子さん(2015年死去)は、一貫して長男の生き方に説教も批判も自慢話も一切せず、「自分で選んだ道を進みなさい」と端然としていました。
父・孝有さんは2013年に札幌で結成した「北大生・宮澤弘幸『スパイ冤罪事件』の真相を広める会」の代表をされましたが、この発端も泰史さんの出会いからです。1985年6月、ロッキー山脈で岩壁登攀中の泰史さんが転落して入院したとき、コロラド州ボルダーの病院で、ボランティアとして通訳と看護をしてくれたのが、秋間美江子さんでした。これを機会に家族ぐるみの交友が続きました。その過程で、秋間さんが太平洋戦争開戦日の1941年12月8日、軍機保護法違反のスパイとして特高に検挙された北大生・宮澤弘幸さんの実妹であったことを知らされました。宮澤弘幸さんは北大時代、登山を愛する文武両道に秀でた学生でした。孝有さんが宮澤弘幸さんがスパイとされた事件の真相を知らせる努力を続けているのは、昨年10月、93歳で亡くなった美江子さんへの感謝とともに、「戦争は絶対に繰り返してはならない」との思いからだと思います。
登山家・山野井泰史さんが、「ビッグコミック」誌上で、どのように描かれるか、期待したいと思います。「ビッグコミック」2022新年号は、今年12月25日発行。以後、毎月10日、25日付で発行されます。
(福島 清)