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2021年12月6日

9回裏、4点差をはね返して逆転サヨナラ・JR東日本東北-師走の都市対抗野球

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ちょっとピンが甘いですが。代打攻勢が逆転劇につながった(12月3日午後5時すぎ)

 「ドラマは九回に待っていた」と、宮城版の記者は書いた。

 9回裏2―6。4点差は絶望的だった。西村亮監督(47歳)は、トップバッターに代打を送った。若林蒼太(東京農大24歳)がセンター前ヒット。2番キャプテン大保優真(星槎道都大26歳)、3番鈴木聖歩(桐蔭横浜大22歳)が連続四球で無死満塁。

 4番打者に代打を送る。新人・大西蓮(履正社高19歳)。センター前へタイムリー。1点を返し、なおノーアウト満塁。

 5番DHにまた代打。トヨタ自動車東日本から補強の望月直也(盛岡大付高26歳)。ライト前へタイムリー。2点差となって、なおノーアウト満塁。

 ここでNTT西日本は投手交代。一塁走者に代走・森勇二(国士館大30歳)。森が還ると逆転サヨナラだ。

 6番安西聡(東洋大27歳)空振り三振で1アウト。
 7番夷塚圭汰(東北福祉大27歳)は四球を選んで、押出しで1点差。なお1死満塁。
 8番小山倭誠(亜細亜大25歳)がレフト前ヒットで同点。なお1死満塁。
 9番新人・金沢龍介(専修大23歳)。打球はレフトへ。三塁走者森がタッチアップして本塁へ滑り込む。劇的な逆転サヨナラ勝ちの瞬間だった。

 西村監督の代打策がズバリ当たった。4点差の9回裏。「流れを変えるしかない」、4・5番打者は「相手投手に(タイミングが)合っていなかった」と試合後に話した。

 西村監督は静岡高→駒澤大→JR東日本東北。高校・大学・社会人といずれもキャプテンを務め、東都大学リーグでは1996秋に、現ロッテ監督の井口資仁(青学大)を抑えて首位打者になっている。2012年母校駒澤大監督となり、2014年秋、エース今永昇太(横浜DeNAベイスターズ)を擁して優勝、明治神宮野球大会でも優勝して日本一になった。

 JR東日本東北監督は、2018年からで、今大会前「やるからには目指すは日本一」と抱負を話していた。

 ネットで9回裏の大逆転劇を調べると、
 《プロ野球では6点差が最大》
93年6月5日藤井寺球場
  ダイエー010 031 003  |8
  近  鉄002 000 007X|9
《高校野球では14年夏石川大会決勝・星稜対小松大谷の8点差》
  小松大谷150 110 000  |8
  星  稜000 000 009X|9
とあった。

 では、都市対抗野球大会では? 残念ながら運動面にその情報はなかった。

 鈴木美嶺さん(1991年没70歳、2017年野球殿堂入り)が記者席にいたら「黒獅子の目」に書いただろうなと思った。

 JR東日本東北は準々決勝で敗れたが、小野賞が贈られた。

 「米大リーグ相手に初の白星を挙げた剛球投手」小野三千麿(1897~1956)は、慶大から毎日新聞記者となり、大毎野球団でも活躍した。1959年に都市対抗野球大会生みの親・橋戸頑鉄(1879~1936)らとともに野球殿堂入り第1号を果たした。

 ことし第92回大会で初優勝した東京ガスは、94年ぶりと報道されたが「創部が都市対抗野球大会の始まった1927(昭和2)年。都市対抗とは縁が深いのですが、黒獅子旗には縁がなくてね」とOBの石丸徹さん(故人)が話していたのを思い出した。

(堤  哲)