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2021年12月20日

超高齢社会という新時代対応で元経済部、牧野義司さんが「身軽化作戦」――自宅を売却処分後、シニア向け賃貸マンションへ転居

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 人生100年時代という言葉に、誰もが違和感を持たないほど、今や日本は、人口の高齢化・長寿化が急速に進み、世界でも先端部分の超高齢社会国家となった。しかも医療技術の進展などに支えられ、80歳、90歳でも元気に活動する高齢者が増えつつある。

 私自身も1943年生まれのため、今や78歳となった。しかしありがたいことに、特に大病もせず健康で生涯現役の経済ジャーナリストを意識して、アクティブに動き回ることが出来ている。そんな私が、周囲で認知症リスクを抱える事例など、超高齢社会のさまざまな現象や問題を目にすると、「余力」があるうちに早く資産処分などを行って身軽になっておくことが大事だ、と考えるようになった。

 「終活」発想ではなく、人生終盤の再活性化への新たなチャレンジ

 そして最近、私は決断し、21年間住み慣れた東京調布市内の2階建て住宅を売却という形で資産処分に踏み切り、大手住宅メーカーが東京都内に新たに開発したシニア向け賃貸マンションに夫婦2人で転居した。

 要は、「終活」といった人生の店仕舞いの発想ではなく、資産処分を行って人生終盤の再活性化チャレンジのきっかけにするため、できるだけ身軽になっておこうと考えた。いわば超高齢社会時代への積極対応策だ。

 そんな意味合いを込めて転居あいさつという形で友人や知人に連絡したら、毎日新聞時代の先輩から「毎友会ホームページのトピックス欄で事例紹介として書いたらどうか。いろいろ悩んでいる人にとって参考事例になるはずだ」と勧められた。そこで今回、私のプライベートな話ながら、皆さんの参考事例になるかと考え、登壇させていただくことにした。

 生涯現役ジャーナリストを目指すと同時に、メディアコンサルティングに関与

 「牧野って、どんな人物だっけ?」と思われる方がおられるかもしれないので、ますは簡単に自己紹介させていただこう。私は早稲田大学大学院経済研究科を卒業した1968年に毎日新聞東京本社に入社した。新聞記者としての駆け出しは「農業を勉強したい」と希望を出した山形支局勤務で、4年間、地方記者として現場を走り回った。72年に東京本社に移り、地方版編集を1年間担当したあと経済部に異動。特別報道部に2年間ほど在籍してキャンペーン報道にかかわった以外は、経済部でさまざまな現場取材に対応した。

 そして、入社20年目の45歳の時に、英国に本社のあるロイター通信が日本に拠点をつくったロイタージャパンに転職、主として日本語ニュースサービス部門で引き続き経済問題取材や編集に約15年間、かかわった。企業文化の大きく異なるロイター通信での編集記者生活は、私にとって外国人記者との日常交流を含め、とても得るものが多かった。

 その後、私は60歳時点で、生涯現役経済ジャーナリストをめざすことを決め、フリーランスで現場取材活動を続けた。インターネット上で「時代刺激人」コラムを書くと同時に、メディアオフィス時代刺激人という事業法人を立ち上げ、メディアで培った人脈や経験、問題意識を生かしメディア向け情報発信アドバイスなどコンサルティングにかかわった。

 身軽化のポイントは自宅という固定資産の処分、「余力」あるうちに決断必要

 さて、本題に入ろう。超高齢社会時代対応を意識したのは、私の周囲で同世代の人が亡くなるケースが目立つと同時に、一家の柱となる人が運悪く認知症、高齢者うつに陥って資産処分をめぐるトラブルに遭遇している事例を聞くようになったことが大きい。

 私の場合、両親はともに85歳でかなり以前に他界しており、親の介護などの問題はほとんどない。また3人の息子たちは会社勤め、あるいは独立してベンチャービジネスなどを立ち上げて活動しており、あとは私自身がどう対応するかどうかだけだった。

 その点で、親の介護や認知症に陥って判断力がつかない親のもとで、老朽化した実家の資産処分をどうするかといった難題を抱えて対応に苦慮されている方々から見れば、私は間違いなくラッキーだ。しかし高齢者に降りかかるリスクは突然、襲ってくることもあり、早期対応が重要。そこで、私は、判断能力や動き回るフットワークなどで「余力」があるうちに行動に移そう、という結論に至った。

 運よく早めに自宅売却でき、転居先にと考えたシニア向け賃貸マンションに

 身軽になる最大のポイントは、自宅という固定資産を売却処分だ。我が家の場合、築21年の中古住宅ながら、軽量鉄骨づくりで、内装に気を付け、補強修理も心掛けていたので、運よく1か月ほどで売れた。この点もラッキーだった。結果的に、固定資産税などの税負担、庭の手入れはじめ屋内の掃除などから解放された。自分事のように申し上げているが、実は、長年の人生パートナーと言えるわが女房の負担軽減の意味合いがはるかに大きい。

 そこで、資産売却のメドがついた段階から、私たち夫婦は、旭化成の子会社、旭化成ホームズが高齢社会時代に対応して開発したシニア向け賃貸マンションが転居先にベストでないかと照準をあてた。ただ、なかなかこれはという物件が見当たらず、当初は苦悩したが、運よく9世帯が入るシニア向け賃貸マンションが東京杉並区内で新築中というので、仲介する不動産会社の案内で見学に行った。2LDKで何と72平方メートルというゆったりスペースで、月額の賃料も飛び上がるような高さでなく、むしろ、サービス内容から見れば、十分にリーズナブルなものだった。そこで、躊躇なく申し込んだら、運よく完成後に入居OKとなって、現在、転居して新たな生活をエンジョイしている。

 シニア向け賃貸マンションはバリアフリー配慮だけでなく健康見回りサービスも

 私自身は、問題意識に裏付けられた好奇心、フットワークのよさ、ネアカコミュニケーション力の3点セットを軸に生涯現役経済ジャーナリスト生活にこだわっており、都心に近い場所を生活&活動の拠点にすることをめざしていたので、身軽化作戦を発動してよかったと思っている。

 皆さんの中にはご関心の向きもあるかもしれず、事例研究の対象として、このシニア向け賃貸マンションのメリットを簡単にご報告しよう。シニア向けのため、一般のマンションと違って、至るところにバリアフリーの工夫が施されている。介護サービス付きの高齢者住宅とは目的が違っており、健康かつアクティブシニア夫婦向け用で、すべて自炊生活。ただ、看護師さんが毎月、「健康面で問題ありませんか」といった巡回サービスの形での見守りをしてくれるほか、綜合警備保障会社ともつながっていて、万一、救急対応が必要な場合、連絡するシステムになっている。

 余談だが、このシニア向け賃貸マンションが見当たらない場合には、他の一般の民間賃貸マンションに行かざるを得ないなと覚悟していた。仲介の不動産会社に聞いたら、賃貸する大家さんが高齢者の入居にはいろいろな意味でリスクが大きいと敬遠気味。しかも生活保護世帯に続いて高齢者層はマンション貸しをしたくない、というランク付けだそうで、当然、安心して新シニア生活を送れる状況でないので、私自身にとっては計画の外だった。

 身軽化作戦での想定外は引っ越しの大苦労、でも2、3年後だったら遅きに?

 ただ、身軽化作戦で想定外だったのは、引っ越しだ。一軒家から一気に手狭なマンション生活に転居するため、さまざまな荷物の整理、処分を覚悟していたが、私の蔵書もバッサリと大処分、わがパートナーの女房も四苦八苦の大整理だった。しかし、今は転居して、本当に身軽になった。この身軽化作戦を早期に進めていなければ、問題先送りのまま、さまざまな難しい問題に直面しただろうな、と実感する。

 さらに、ぜひ付け加えさせていただきたいのは、将来の私自身の認知症リスクなどさまざまなリスクが一気に表面化する前に身軽化のアクションをとる必要があると考えたこと、加えて、私自身が80歳になってからでは、今回のようなアクティブな行動をとれたかどうかわからず、その意味でも早期の決断はよかったのでないかと思っていることだ。

 超高齢社会システムデザイン行えば、人口高齢化で続く国々からリスペクトも

 最後に、私は経済ジャーナリストの立場で、ここ数年、ますます重要だなと思っているのは、超高齢社会化した日本が早く超高齢社会の社会システムデザインを行い、さまざまな分野で新たな制度設計を行うことだ。

 日本は人口の高齢化のみならず少子化でさまざまな問題を抱え、中でも高齢化に関しては世界のトップランナーだ。社会の高齢化に伴う医療や介護などにとどまらず、あらゆる分野で社会システムデザインを行って、先進モデル事例をつくれば、中国、韓国だけでなくタイ、ベトナムなど高齢化の面で後追いしてくる国々にとって学びの対象になり、逆にリスペクト(尊敬)の対象となるのは間違いない。

 その場合、高齢者が住みやすい経済社会づくりがポイントではない。後に続く若い世代との共生、端的には人生椅子取りゲームでシニア世代は座る椅子を若い世代に積極的に譲って世代間交流をつづけ、自身は別の、新たな椅子をつくる、という発想が重要なことは言うまでもない。私は今回の身軽化をきっかけに、フットワークよく活動を続けていこうと思っている。皆さん、いかがだろうか。

(牧野 義司)