2023年5月8日
北海道・松前で「平和を願う桜」記念碑序幕に、英国から阿部菜穂子さん
=毎日新聞北海道版転載
「桜」を通じた英国との交流が盛んな松前町の松前公園で5日、日英平和友好親善の礎となる記念碑の除幕式が行われた。30年前に英国に桜の苗木を贈った七飯町在住の桜研究家、浅利政俊さん(92)と、英国で松前桜の植樹を進める英オックスフォード大植物園のベン・ジョーンズ園長(45)らが出席し、鮮やかに咲き誇る桜の下、交流を深めた。
記念碑は浅利さんが町に贈った。1863年、松前で座礁した英国商船から乗組員19人を救助したことが日英友好の礎となったと記されている。
浅利さんは江差町で小学校の教諭をしていた1957年から桜の植栽や品種改良に取り組み、松前公園を桜の名所につくり上げた。93年には英ウィンザー王立公園の依頼を受けて58種の苗木を贈り、松前桜はその後、英国内の公園で育てられるようになった。
郷土研究家でもある浅利さんは、第二次世界大戦時に函館捕虜収容所で多くの英国人らが命を落としたことから「松前桜は平和と友好への思いを込めた『償いの桜』だった」と振り返る。この日の除幕式では、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、「思いやりを持てる心を生かし、友好親善活動を発展させてほしい」と話した。
英国では、英貴族のジェイソン・ゲイソンハーディ卿が松前桜を生かした公園づくりを進めるほか、オックスフォード大植物園も数百本の桜を植樹する計画を進めている。ジョーンズ園長は「浅利さんが英国に贈った桜は世界各地に広がっている。『松前』の名が世界中に広がっていることを誇りに受け止めてほしい」と話す。
浅利さんの「償いの桜」のエピソードは、英国在住のジャーナリスト、阿部菜穂子さんの著作「チェリー・イングラム 日本の桜を救ったイギリス人」で紹介されている。除幕式に出席した阿部さんは「松前公園の素晴らしい桜の価値を世界に発信してほしい」と話した。
(三沢 邦彦)
※前触れの「GW松前さくらまつりで日英親善の桜イベント」は3月27日に掲載されています。