2020年6月16日
『汚れた桜—「桜を見る会」疑惑に迫った49日』遅まきながら新刊紹介
毎日新聞出版のHPの惹句にこうある。
明細書のない前夜祭、黒い友達関係、消された招待者名簿...... 一連の「桜を見る会」疑惑を追った記者たちの記録。
著者は、毎日新聞「桜を見る会」取材班。政治部、社会部の混成チームかと思ったら、全然違った。
東京本社編集編成局(かつての編集局)統合デジタル取材センター(2017年4月新設)の江畑佳明、大場伸也、吉井理記の3記者によって2019 年11 月11 日に発足したチームとある。その3日前、11 月8日の参院予算委員会で田村智子議員(共産)がこの問題を初めて取り上げ、「SNS で大きな反響を呼んだことがきっかけだった」と取材チーム発足の経緯を説明している。
記事の掲載は、毎日新聞本紙ではなく、毎日新聞ニュースサイトである。本紙の紙面では記事のスペースが限定されるが、こちらは国会審議の詳細や、安倍首相の記者会見の模様も裏話を含めて記事のボリュームに制限がない。安倍晋三事務所が出した『桜を見る会』の案内、参加申し込み書、前夜祭・桜を見る会の当日の日程の入ったツアー案などなど、データがそのままアップされる。むろん写真もである。
「はじめに」にこうある。
――本書は世の中を揺るがしたスクープの回顧録ではない。生々しい政界の裏話でもない。ただ、SNSを通じて届く人々の声を背に、桜を見る会で何が起きたのか、そもそも何が問題なのかを、問題が発覚してから2019年最後の野党による政府(注:内閣府)ヒアリング(12月26日)までの49日間、できるだけ分かりやすく伝えようとしてきた記者たちの記録である。
そして、記者の動きを追っていただくことで、日々SNSに流れてくる断片的なニュースにどういう意味があるのか、理解を深めていただくための書である。2月1日に初版、桜の咲くころには、あっという間に4刷りを記録した。
執筆者の履歴が載っている。
江畑佳明。75年寝屋川市生まれ。同志社大大学院修了後、99年入社。山形・千葉支局→大阪社会部→東京社会部→夕刊編集部→秋田支局次長→2018年現職。
大場伸也。73年横浜市生まれ。早稲田大学大学院修了後、2000年入社。船橋・千葉支局→政治部→東京経済部→長崎支局→西部本社小倉報道部→現職。
吉井理記。75年東京生まれ。法政大学卒、99年西日本新聞→2004年入社。宇都宮支局→東京社会部→北海道報道部→夕刊編集部→19年現職。
デスクの日下部聡。筑波大学卒、1993年入社。浦和(現さいたま)支局→サンデー毎日編集部→東京社会部→2018年統合デジタル取材センター副部長。16~17ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。著書に『武器としての情報公開』(ちくま新書)。
中年記者たちの躍動ぶりを味読してください。
定価:1,200円+税、毎日新聞出版
ISBN:978-4-620-32619-1
(堤 哲)