新刊紹介

2020年7月6日

藤原健著『終わりなき<いくさ> 沖縄戦を心に刻む』

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 7月4日付毎日新聞朝刊「今週の本欄」で紹介された。

 筆者は、1950年岡山県生まれ。74年毎日新聞入社。大阪本社社会部長→同本社編集局長→スポニチ常務→2016年妻の古里沖縄に移住。沖縄大学大学院入学(現代沖縄研究科沖縄・東アジア地域専攻)。琉球新報客員編集委員。

 2018年12月に琉球新報社から『マブイの新聞―「沖縄戦新聞」沖縄戦の記憶と継承ジャーナリズム』を発刊している。

 75回目の沖縄慰霊の日。女子高校生は「平和の詩」の中で、凄惨(せいさん)な地上戦を奇跡的に生き延びて命をつないでくれた「あの時」の「あなた」に感謝し、平和の尊さを訴えた。一方、ある教員団体の調査では「沖縄戦を語る家族や親族がいない」と回答した高校生が今年半数を超えた。継承の重みは年々増している。

 琉球新報客員編集委員を務める著者が連載コラムを軸にし、沖縄戦をどう心に刻み、いかに語り継ぐかを徹底して考え抜く。ゆがんだ歴史修正主義の陰がちらつく中で、苦い過去から得た「民衆知」にこそ真実があるとし、体験者の声に耳を傾け、戦跡を訪ね、記憶を継承する若い記者や教員、子どもたちに希望を託す。

 著者は本土の新聞社を退職後、66歳で沖縄に移住。大学院で学び、沖縄の歴史と現実に自分ごととして関わり直したという。住民の意思を無視し、「国の都合と論理」で米軍基地の移設工事が続く現状に「終わりなき<いくさ>の影が沖縄から消えることはない」と指摘。「気の毒だが、仕方ない」と基地負担を容認する国民の思考放棄の責任にも触れる。沖縄が抱え続ける痛みとどう向き合うのか。誰もが自問させられる。

 (琉球新報社・2200円)

(鵜)