2020年12月24日
越川健一郎元社長が綴る『わたしのナゴヤキャッスル物語』
名古屋市の出版社「風媒社」から『わたしのナゴヤキャッスル物語』という本を令和2(2020)年12月末、出しました。
34年間勤務した毎日新聞社から子会社の一つで、ホテルを運営する株式会社「ナゴヤキャッスル」に転身したのが平成24(2012)年春。代表取締役社長として6年、代表取締役相談役と非常勤相談役をそれぞれ1年。この8年間に、名古屋城を借景に見立てたホテルナゴヤキャッスル(前ウエスティンナゴヤキャッスル)を拠点に繰り広げられた人間模様を元ブンヤの眼で描いたノンフィクションです。
異次元のホテル経営者の人事案を当時の朝比奈豊・毎日新聞社代表取締役社長より示された時、精神的な肉離れ、腸ねん転を起こし、甲府支局長時代以来2回目の帯状疱疹を発症。極楽とんぼの私でも相当なストレスを感じて別天地に飛び込んだのです。
しかし、いざ働き始めてみると「伝える」「記録する」ことを使命とする新聞記者とは違う「おもてなし」の現場に身を置く「謙虚さを持った誇り高き集団」の仲間入りをしたことに非常な喜びを感じることになります。
赴任直後、ホテルの1階ロビーに設えられていた七夕飾りに「亭主が早く死にますように!」と赤字で書かれた短冊が見つかりました。そして同じような「けしからん内容の短冊」が再び見つからないかどうか、客がいなくなった夜間、脚立に乗りながら点検するスタッフの姿に目がしらが熱くなったものです。
「歴史を最初にデッサンする」新聞記者で言えば、世間を震撼させる事件・事故で大スクープをものにした時、取材源の秘匿を守るのは最低限の作法です。「ネタ元のことは墓場まで持っていく」なんて言い方をしますよね。
実はホテルでもスタッフと顧客との関係は似たようなところがあって、秘密は共有して他言しないからこそ信頼関係が生まれ、リピーターになってくれるのです。日本を代表するビッグビジネスの大きなパーティーをナゴヤドームで行い、億単位の利益を上げる舞台裏は「書かないでくださいね」と言われました。在職中、宴会途中に爆弾を仕掛けるという予告があり、愛知県警へ警備要請をしたことも幾度となくあります。
ホテルナゴヤキャッスルは令和2(2020)年9月末で閉館。現在の親会社である興和株式会社の主導で解体、建て替えが進められ、4年後にグランドリニューアルオープンする予定です。また、名古屋駅前にあるキャッスルプラザも明治安田生命との定期賃貸借契約が令和3(2021)年初めに満了となり、閉館します。
そのような時期に合わせ、ナゴヤキャッスルを愛し、育ててくれた地元名古屋の方々に表玄関からは決してうかがい知ることのできないホテルの「舞台裏」のエピソードを伝えたい。正社員やAS(アシストスタッフ)が、それぞれ新たな職場、道を求めていくことを考えた時、先輩から引き継いだキャッスル・スピリット、遺伝子を心に刻み込んで強く生きていってもらいたい、と思って筆をとりました。
興味のある方はネットからも予約できますので、ご一読願えれば幸いです。
「毎友会」のHPに拙著の紹介の場を提供してくれた敬愛する高尾義彦先輩にも感謝の言葉を差し上げたいと存じます。
(追伸)
本書12ページにある「ラインホルド・ニーバー」は「英国の詩人」ではなく「米国の神学者」の誤りです。勉強不足、点検不足のなせる業です。お詫びして訂正します。
(元株式会社ナゴヤキャッスル代表取締役社長、越川健一郎)
『わたしのナゴヤキャッスル物語』 1,600円+税