2021年2月1日
『検証 良心の自由 レッド・パージ70年 新聞の罪と居直り―毎日新聞を手始めに―』
寿限無寿限無のような表題の冊子を刊行しました。熊五郎と一緒で、あれもこれも大事と取り込んだ次第、降版間際、絞らなボツと言われりゃ「良心の自由」でしょうか。冊子といいながらB5判で300ページに達しましたが、その中で「良心の自由」と柱を立てた論考もありません。しかし振り返れば、常に「良心の自由」を念頭に、あるいは胸奥に秘めて取材し整理し執筆していたように思います。
世情は2極分化といい、格差が際限なく広がり、他を完膚なきまでに排除する風潮が蔓延しています。輪をかけての悪は、これをつまみ食いして胡坐かき、寄らしむべし知らせるべからずを政治と心得る政権が居座っていることでせう。根っこにあるのは得体のしれない不安、不安定感かもしれません。そこから逃れるには絶対差別の対象をつくり、おれたちゃ奴らと違うんだと思い込むことで安全地帯を築き上げる。そんな誘惑にかられたことがないと言い切れるでしょうか。忸怩たるところです。
われらの世代、「レッド・パージ」という言葉、常に内なる辞書の中にあったように思います。だが殊更にひもとく気は起こさなかった。あたしとは関係ない、そんな強迫観念をかこっていたのやもしれません。ここを一丁、何が出て来るか、徹底掘り返してみようやとなったのが今回冊子です。言い出しっぺは、かの新旧分離の難時に組織のかなめ書記長を担った福島清さん。その両脇を盟友、根岸正和、水久保文明が固め、さらには大勢のみなさんから、ああでもない、こうでもない、あなたそれじゃ駄目よ、本気で掘り直しなさいと叱られ励まされ、いくつもの新事実や見識を引き出し、広がり深まりました。
良心の自由は権利であり義務です。暮らしに取り入れ、時に権力による侵害には死に物狂いとならなければ唯の憲法の条文として棚上鎮座となります。レッド・パージは、それを雄弁に立証しています。本件解雇被害者の一人・小林登美枝さんは戦後獲得の女性の権利にからめ、「物質的に豊かになったけれど、本当に人々は幸せになったのか。獲得した権利を使わない人がいる一方、間違った使い方をしている」と懸念、絶筆の一部としています。学び生かさなければならない言葉と肝に銘じおります。
何が、どう書かれているかは、どうぞお手にとってお確かめください。印刷は懐相談で500部に限りましたが、若干の在庫がございます。版元も「北大生・宮澤弘幸『スパイ冤罪事件』の真相を広める会」といって、これも寿限無ですが、千代田区労協事務局に間借してますので、同連絡先(03・3264・2905)へ。特別頒価・送料込み2000円です。「真相を広める会」ホームページに全文を公開しています。http://miyazawa-lane.com/ 南無