2022年4月14日
山本雪彦連句集『海峡』 元サンデー毎日の山本茂さん
1964年入社山本茂(84歳)の俳句集である。奥付に令和4(2022)年1月20日初版、楡影舎(☏049・298・7513)発行。
【著者略歴】本名・茂。昭和12年、北海道夕張郡角田村生まれ。北大(農)卒、新聞記者、ノンフィクション作家、雑誌編集長、女子大教授。俳誌『雨蛙』同人。
表紙に刷り込んだ3句。
白きもの辛夷と海峡の波がしら
鴎外のシュプレー河や青き踏む
月明に酌む百年の孤独かな
まえがきに「ワンテーマ連作」への試みとあって、「一句がそれぞれ有季・定型を満たして自立しつつ、なお互いに補完し合い、それによって読み手の理解を深め、読み終えたときに一つの物語が浮かび上がる――そういう俳句形式である」と説明している。
自分史にもなっている。
曾祖父の開拓私史や指凍ゆ
明治26年、富山県砺波郡から108戸の集団開拓団第1号として北海道空知郡清真布村(現岩見沢市)に入植した。山本茂のルーツである。
夕しぐれ渡り大工の父帰る
「田畑を捨て、雑貨店をひらいたが成功せず、私が生まれたときは俄か大工だった」
飛んで毎日新聞社入社。「上京・一九六四年——春」から。東京五輪の年である。
社屋仰ぎ胸にいっぱい春の風
有楽町駅前喫茶風信子
春塵や日劇ダンサーの長い脚
街街に五輪音頭や四月尽
「三月の末、友人や親族や許婚者などに見送られて残雪の札幌駅を発った。未来への不安など一片もなかった」
「青函連絡船、東北本線を乗り継ぎ上野駅に着いた」
「山手線路線図を頼りに有楽町駅に着いた。目の前に映画で見た百貨店がある。『有楽町で逢いましょう』で野添ひとみと川口浩がデートしたのは、このそごうデパート二階の喫茶店ではなかったか。私は野添の大ファンだった」
◇
この毎友会HP「元気で~す」で山本茂を取り上げている(4月5日)ので、そちらも読んでください。46歳で毎日新聞社を退職したことを今回初めて知った。ゴメン、同期入社でありながら。九州女子大では国文学を教えていた。
(堤 哲)