新刊紹介

2025年3月18日

西部本社元学芸課長の妻が『眼述記』を出版

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 紙面は、3月17日付け福岡版である。

 写真の手前が元毎日新聞西部本社福岡総局学芸課長・矢部明洋さん(62)、その後ろで『眼述記』を手にしているのが、妻でライターの高倉美恵さん(59)。

 矢部さんは、2014年11月に脳梗塞から全身まひとなった。しかし、記憶はしっかりしていて、文字盤を目で追って意思疎通することができるようになった。

 矢部さんの「眼述」を、妻美恵さんが記録、マンガを添えて2017年から月2回のペースで福岡版に連載、それをまとめたものだが、25年4月からは書き手が矢部さんに交代と紙面にある。

 矢部さんは全身まひになったあとの2年半前にも、学芸課長時代に書いた映画評をまとめて『平成ロードショー―全身マヒとなった記者の映画評 1999~2014』を同じ忘羊社から出版している(2022年9月刊)。

 この『平成ロードショー』は、元西部本社編集局長松藤幸之輔さんと元論説副委員長元村有希子さんが毎友会HP「新刊紹介」(2022年8月23日)で紹介している。

 その中で松藤さんは、編集局長時代、矢部さんが直木賞作家の葉室麟さん(2017年没66歳)と歴史上の人物を語る対談「ニッポンの肖像」を月1回連載、黒田官兵衛、宮本武蔵、坂本龍馬、北条政子などと続いた、と綴っている。

 連載は、2014年1月から翌15年12月まで24回だった。矢部さんが脳梗塞で倒れたあとも続いたのだ。そして講談社から『日本人の肖像』として16年8月に出版された。

 矢部さんは「聞き手」として表紙に名前が刷り込まれている。まえがきで葉室さんは、こう記している。「この本の前半は、毎日新聞西部本社学芸課長でデスクの矢部明洋氏との対談の形で進められました。わたしの雑駁な話が矢部氏の力によって整合性のあるものにまとめられていったというのが実感です。わたしの意見というより、矢部氏の理解力、構成力をもとにした『対話』であるということに意味があるのではないかと思っています」

 『日本人の肖像』は、文庫本として、今週(3月22日)に角川文庫から出版される。

 矢部さんの出版社HPにある略歴は、1963年京都市出身。同志社大学経済学部卒業。87年毎日新聞社入社。福岡総局、山口支局を経て西部本社学芸課長時に脳梗塞と脳出血を発症。2019年退職。

(堤  哲)

 『眼述記』は忘羊社刊、定価:1750円+税。四六判264㌻。