新刊紹介

2025年4月14日

工藤哲著『ルポ 人が減る社会で起こること─秋田「少子高齢課題県」はいま

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 1999年入社工藤哲さんが4月下旬、新刊『ルポ 人が減る社会で起こること──秋田「少子高齢課題県」はいま』(岩波書店刊、定価2420円)を出版する。

 工藤記者は「秋田に来て支局デスクで1年半と記者で3年の計4年半、秋田の特派員になったつもりで各地を回り、聞いて知り得たことをまとめました」と話し、さらに「構成した記事のほとんどは、地方版の東北共通面に掲載してきたものですが、東北、または全国で抱えている課題に通じるものであるはずだと考え、少しずつ書き続けてきました。秋田は広く、まだまだ分からないことは多いですが、なかなか伝わりづらくなっている離れた日本の地方の今について、ご関心を寄せていただけましたら幸いです」。

 地方機関の現状について「今、東京から離れた地方支局はかつての記者の教育機関から様変わりし、若手記者の数は徐々に減り、ある程度経験を積んだベテラン記者の割合が高くなっています。全国紙などの記者の数は減る傾向にありますが、その分ますますそれぞれの記者が海外特派員のような存在に近くなっており、より個性を発揮でき、それまでの取材経験を生かしやすい場になってきています」。

 海外特派員を経験した、いわばベテラン記者が「地方記者」をすることについては「地方での勤務は、記者にとっては何歳、あるいは何年目であっても新鮮な経験や出会い、財産につながるもので、駆け出しの若い時とはまた違った新たな発見がいくつもあります。記者になった原点や、やりがいを改めて見つめ直し、じっくり考え、学ぶことができるとても貴重な場だと思います。支局の取材分野はかつてよりもかなり自由になっており、ウェブ上での確かな手応えもあります。若手記者や中堅の方にも、より読者に近い場での取材のやりがいや醍醐味をぜひ経験して欲しい」といっている。

 岩波書店のHPは、こう紹介している。

 秋田は日本の未来だ――。世界最速ペースで進む日本の少子高齢化。中でも最も進行が早い世界最先端の高齢化地域・秋田でいま何が起きているのか?人が減ったエリアで増加するクマなどの獣害、警察官、公共交通や農業の担い手不足、活かせない観光資源など、あらゆる地方が直面する課題を現地から報告する。

 目次の最後に「おわりに・問われる地方ジャーナリズム」。デジタル最前線の上海から秋田へ▽地方取材の発信が縮小しつつある▽記者が「提案」や「情報交換」することの意義▽東京一極集中は「リスク」、と問題提起をしている。

 工藤記者は1976年青森県生まれ。埼玉県育ちで99年入社。盛岡支局→東京社会部→外信部・中国総局(北京2011〜16年)→特別報道グループ→上海支局長(18〜20年)を経て秋田支局次長。そして秋田支局記者。

 民法772条などの改正につながった無戸籍についてのキャンペーン報道で2007年疋田桂一郎賞。

 著書に『中国人の本音 日本をこう見ている』『上海特派員が見た「デジタル都市」の最前線』(以上、平凡社新書)、『母の家がごみ屋敷 高齢者セルフネグレクト問題』(毎日新聞出版)、共著に『離婚後300日問題 無戸籍児を救え!』(明石書店)など。

(堤  哲)